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新生児の適応生理ペリネイタルケア 2017 新春増刊 163新生児第 章4循環の適応生理胎児循環・新生児循環■胎児循環 胎児循環を理解するためのキーワードは、①静脈管、②卵円孔、③動脈管、④高い肺血管抵抗、⑤低い体血管抵抗――の5つである。 p.162の図Ⓐに胎児循環のイラストを示す。胎盤からの動脈血は、臍静脈を介して、多くは静脈管に流入するが、一部は門脈を介して肝臓に流入する。静脈管は、下大静脈に合流するため混合血となる。この混合血は、右心房から卵円孔を介して左心房に流入する。さらに左心室、大動脈へと流れて、主に頭部に血流を供給する。 一方、胎児の上半身からの静脈血は、右心房に流入した後、多くが右心室から肺動脈へ流入する。肺動脈の血液の多くは、肺血管抵抗が高いため、動脈管を介して血管抵抗が低い大動脈に流れる。さらに、総腸骨動脈の分枝である内腸骨動脈を介して臍動脈に流入して胎盤に戻る。■新生児循環 新生児循環への移行を理解するためのキーワードは、①胎盤循環からの離断、②体血管抵抗の上昇、③肺血管抵抗の低下、④卵円孔血流方向の変化と閉鎖、⑤動脈管血流方向の変化と閉鎖、⑥静脈管閉鎖――の6つである。 p.162の図Ⓑに新生児循環のイラストを示す。新生児は、胎盤循環から切り離されるため、体血管抵抗が上昇する。呼吸開始とともに、肺動脈が拡張し肺血管抵抗が急激に低下して、肺血流量は胎児期の5〜10倍程度に増加する1)。その結果、左心房に還流する血流量も増加する。右心房圧も低下するため、卵円孔の血流は、左心房から右心房へと流れるようになる。その後、卵円孔が閉鎖して卵円窩になる。出生後、体血管抵抗が上昇し、肺血管抵抗は低下するため、動脈管の血流も大動脈から肺動脈への流れに変化する。その結果、動脈管内には酸素飽和度の高い血液が流れるようになる。この酸素飽和度の上昇と、胎盤からのプロスタグランジンEの供給停止などの機序によって動脈管が閉鎖する2)。閉鎖後は動脈管索になる。静脈管は、通常、出生後数日で閉鎖する。胎盤循環停止に伴う静脈管内圧の低下による受動的な閉鎖であると推定されており、閉鎖後は静脈管索となる。適応障害の例 早産児の場合、出生後も動脈管が閉鎖しない場合がある。この適応障害が未熟児動脈管開
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