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213ペリネイタルケア 2017 夏季増刊母乳育児を支援する7団体 サポートの実際第 章3 桶谷式乳房手技は、助産師である桶谷そとみ(図1)が考案した乳房ケア技術である。 桶谷は大胸筋と乳腺体後面の境界に着目し、その部分を「基底部」と名付けた。基底部は、本来自律性があり伸縮性を持つが、さまざまな理由で伸縮性を失うと大胸筋に癒着したような状態となる。桶谷は、癒着状となることで、乳房は硬くなり児が飲みにくくなり、そうしたことからさまざまな乳房トラブルが起こるのではないかと考えた。桶谷式乳房手技は結合組織からなる基底部を用手的に遊離させることで、痛みを与えることなく、乳房全体を柔軟に、児が飲みやすくなるように整える結合織マッサージである(図2)。 桶谷式の特徴を表1に示す。手技操作において乳腺組織ではなく乳房の基底部を操作することが、従来までの乳房マッサージと桶谷式乳房手技との大きな違いである。 手技は右乳房基底部操作と搾乳、左乳房基底部操作と搾乳を1クールとして1〜2分で行い、1回の手技は15分ほどである。基底部操作は乳房の輪郭部に沿って行い、乳腺体に指を食い込ませないように手指だけでなく手掌を使うことが重要である(図3)。また搾乳は、児に吸啜されているような感触が母親に伝わるよう、搾乳速度、力の調節、心地よさを与えるように行う。正確かつ効果的な手技の伝承のため、手技習得には研修センターで1年間、技術と理論を学ぶシステムを採用している。 桶谷式乳房手技は1980年代に広く普及し、「乳房マッサージは痛いもの」という考え方から「心地よいもの」に変わり、この乳房基底部を操作する方法は、その後多くの乳房マッサージで取り入れられている。桶谷式乳房手技とは桶谷式乳房手技01図1 創始者・桶谷そとみ一般社団法人桶谷式乳房管理法研鑚会会長、助産師、桶谷式認定者 原  正子 はら まさこ桶谷式乳房管理法研修センター教務主任、助産師、桶谷式認定者 氷見 知子 ひみ ともこ

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