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214ペリネイタルケア 2017 夏季増刊 創始者である助産師・桶谷そとみ(1913〜2004年)は、第2次世界大戦中、助産師として活動していた満州(現・中国北東部)で、栄養失調で命を失う乳児を目の当たりにし「母乳さえ出れば……」という強い思いから、独学で桶谷式乳房手技を考案した(図4)。戦中・戦後の混乱の中、この手技によって多くの乳児の命が救われた。 満州から引き上げた後、桶谷そとみは富山県高岡市で助産所を開業し、独自の乳房手技(マッサージ)と理論を「桶谷式乳房管理法」として完成させていった。桶谷式乳房手技は「痛みがなく、母乳がよく出るようになる手技」と評判となり、1970年ごろからはマスコミにも取り上げられ、多くの人に知られるようになった。当時の日本は、戦後からの人工乳の普及により母乳栄養率が急激に落ち込み、国の政策として母乳育児推進が掲げられた時代である。そのような時代背景もあり、多くの助産師が手技の伝授を求めて全国から集まってく桶谷式の歩み表1 桶谷式乳房手技の特徴2)①被術者に苦痛を与えない(痛くない手技)②全身爽快・安楽になる③乳房・乳頭の形や大小に関係なく乳汁分泌を促進する④乳質を良くする⑤陥没・扁平・裂状乳頭の矯正⑥乳頭損傷・乳腺炎の予防と治療(ケア)⑦断乳・乳汁分泌の抑制⑧更年期の不定愁訴を緩和する図3 乳房の輪郭に沿って手を置いているところ乳頭〈手技前〉〈手技後〉乳輪乳腺体基底部大胸筋図2 手技前後の乳房のシェーマ1)

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