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ペリネイタルケア  2018年 夏季増刊161CG-403胸部症状 どう考える?●胸部症状の原因 妊娠中、分娩中、産褥期に見られる胸部症状には、どのようなものがあるでしょうか。臨床で比較的多く遭遇する表の5つのパターンを頭に入れておくことが大事です。●それぞれの胸部症状の病態と対応 図1に前述の胸部症状を似顔絵にしました。まず、重症例ではどう行動すればよいかを見ていきます。⿎肺血栓塞栓症 似顔絵の右目は「肺血栓塞栓症」の血栓です。“雨どい”の流れを手でせき止めたことを想像してください(図2)。遮断した手の上流はあふれ、下流にはほとんど水が流れません。上流に相当するのが右心室で、下流に相当するのが肺組織です。右心室はパンパンに張って(拡張)、右心房まで血液が逆流します。X線写真ではあまり変化が見られませんが、心エコーが診断に有益です! 心電図では、右心室が張っている所見が取れるので診断に迫れます。「心電図!」の指示が出たら、診断に役立つので急いで取りましょう。心電図検査が終了したら、心電図モニターも付けましょう。産科救急のギモンCG-403榊原記念病院産婦人科 部長 桂木真司 かつらぎ しんじ周産期の胸部症状肺血栓塞栓症下肢~骨盤内静脈でできた深部静脈血栓が肺動脈に飛んで、胸痛、呼吸苦を訴える。チアノーゼが出現し、頻脈を伴うことも多く、程度が強い場合には失神する。帝王切開術後の離床時に最もよく見られる。大動脈解離「背中、顎が痛い」と表現する場合もある。心タンポナーデを伴う場合には、急激にショックに陥る場合もある。ラテックスアレルギー手袋での内診後に、突然、呼吸困難を訴えることもある1)。周産期心筋症少し動くと息苦しい、程度が強くなると仰臥位を取れず、起座呼吸でチアノーゼが出現する。HELLP症候群レニン・アンギオテンシン系が活性化され、血管が収縮し、消化管・肝臓に行く血流が減少するために生じる。妊娠34週以降の高血圧症を伴う妊婦、褥婦に多く発生する。嘔気・嘔吐が随伴することも多く、妊産婦が心窩部痛を「胸が痛い」と表現する場合も見受けられる。妊娠中、分娩中、産褥期に見られる主な胸部症状と病態表胸部症状 どう考える?

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