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1周産期のくすり〜もう添付文書は怖くない!? 妊娠を知らずに薬を服用していた女性から胎児への影響を聞かれたことや、授乳中の女性から薬を服用してもよいかどうかを聞かれたことがある周産期医療従事者は多いだろう。これまでの医薬品の添付文書は、こうした疑問に答えてくれなかった。添付文書の使用上の注意に「投与しないこと」とあっても、その理由が「動物実験で催奇形性作用が報告されている」「乳汁中に移行することが報告されている」という記載のみのものが多く、妊婦の治療上の有益性や母乳栄養の有益性を考慮した記載はほとんどなかった。また、これまで妊婦や授乳婦に対して広く使われ、有害な影響が報告されていない薬剤についても、安全だと説明するための情報が記載されていなかった。 この「添付文書」が、20年ぶりに改定されることになる。前回の改定では授乳婦への投与が追加されたのみなので、妊婦への投与に関していえば実に、約40年ぶりの大改定とも言える。「添付文書」はいつ変わる? 医療用医薬品の添付文書は、医師、歯科医師および薬剤師に対して必要な情報を提供する目的で、当該医薬品の製造業者または輸入業者が作成する文書であり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」で規定されている。添付文書の記載要領は1976年に定められた後、1997年の改定1)を経て2017年6月に全面改定が通知された2)。2019年4月1日に施行された後の5年間の移行措置の間は、改定前後の添付文書が混在することとなる。「添付文書」はどう変わる? 改定の要点には、「原則禁忌」および「慎重投与」の廃止、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」などの廃止、「特定の患者集団への投与」の新設、項目の通し番号の設定がある。「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」は廃止されるが、新設された「特定の患者集団への投与」に「妊婦」「授乳婦」、そして「生殖能を有する者」の項目が含まれる(表1)。妊 婦 「妊婦」の項を見ると、「胎盤通過性及び催奇形性のみならず、胎児曝露量、妊娠中の曝露期間、臨床使用経験、代替薬の有無等を考慮し、必要な事項を記載」した上で、投与に関する注意事項を記載することになる。つまり「投与しないこと」と記載する場合には、その理由として、これまでの添付文書(表2)にあるような「動物実験で催奇形性作用が報告され筑波大学医学部医学医療系総合周産期医学 准教授●小畠真奈 おばた まな14 ペリネイタルケア 2019 新春増刊

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