ペリネイタルケア 2020年 新春増刊3 分娩周辺期に行われる産科手技には、さまざまなものがあります。当然、医師でなければ行えないような帝王切開術などの手技もあれば、会陰保護や乳房ケアなど助産師が得意とする手技もあります。しかし、自らが行わなくても、その手技の目的や内容、期待される効果と合併症について理解しておくことが大切です。医師、助産師、看護師が互いの手技を理解できていることで、急変時の現場においてチーム力が発揮できることとなります。急変時ではまず人を呼ぶこと(医師も、助産師も、看護師も)が大切ですが、人が集まるまでは現場で行うべき適切な処置を、優先順位を付けて行わなければなりません。今まで遭遇したことがない急変現場で、初めての処置やその介助をいきなり任されることが明日にでもあるかもしれません。そのようなときに慌てないように、常日頃から産科の医療現場で経験する手技について自己研けん鑽さんし、自らシミュレーションを行うことが大切です。また、職場でも同僚と一緒に(当然医師も巻き込んで)、急変時のシミュレーションを行うことが大切です。 本増刊は、好評だった2012年夏季増刊『産科の必須手技ベスト58』のアップグレード版です。前回は2色刷りでしたが今回はオールカラーとし、ビジュアル面をより充実させ内容の理解が深まるような誌面になっています。今回は特に分娩周辺期にフォーカスを当てて、入院時から、分娩期、分娩直後、産褥期、新生児期のそれぞれにおいて正常時に行われる基本的な手技と、異常時(特別なとき)に行う手技とに分ける構成としました。まず、基本的な手技を時間軸に沿って理解してもらい、通常から外れた場合にどのような処置・手技が必要なのか、自施設で行えるのか、周産期センターなどの高次医療施設ではどのような手技を行っているのかを学べる内容としています。どのような施設に勤務していても、また施設を移っても参考になるような手技を、写真とイラストを中心に分かりやすく解説しています。当然、皆さんの施設でのやり方(手技)と異なることもあると思います。その場合でも、妊産婦の安全を確保しながら、自施設の手技と本増刊の手技とを比較して、いいとこ取りをしてください! 本増刊は、臨床の知恵とコツが詰まった実践的な解説書です。手技の解説ではいわゆるエビデンスに乏しいものも少なくありませんが、臨床の現場では妊産婦の安全が確保できるのであればエビデンスのみならず、伝えられた経験や知恵も大切です。本増刊が、若手助産師からベテラン助産師まで、また、分娩に携わる医師や看護師などさまざまな人の手元に置かれ、日々の臨床や新人指導などに役立つことを願っています。聖隷浜松病院産婦人科・総合周産期母子医療センター 部長村越 毅はじめに
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