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ブレインナーシング 2018年 夏季増刊132章1急性期広範囲大脳半球脳梗塞患者への看護脳梗塞により脳細胞が壊死すると、その梗塞範囲に脳浮腫が起こります。頭蓋腔が閉鎖腔であるため、脳浮腫による水分の貯留が起こると脳実質が増大し、脳組織は圧迫され頭蓋内圧を上昇させます。脳浮腫は一般的に発症から1〜3日目ごろがピークとなります。また、発症直後の脳梗塞に対して行われる血栓溶解療法(rt-PA静注療法)や脳血管内血栓回収療法を行うと頭蓋内出血を発症するリスクがあること、広範囲大脳半球脳梗塞や心原性脳塞栓症の場合は出血性梗塞となるリスクが高いことも、頭蓋内圧を亢進させる一因として考慮する必要があります。頭蓋内圧が亢進すると脳組織が圧迫されて新たな障害を引き起こすだけでなく、脳ヘルニアを起こし生命の危険がある重篤な状態となる可能性があります。そのため、脳浮腫による影響を最小限にとどめること、頭蓋内圧亢進症状や頭蓋内出血による神経徴候の増悪を早期に発見し、脳ヘルニアを回避することが重要です。脳浮腫による影響を最小限にとどめ、脳ヘルニアが回避できる看護目標脳浮腫や頭蓋内出血リスクに関連した 頭蓋内圧亢進の合併症リスク状態#1アセスメントのポイント摂食嚥下リハビリテーションも早期から行うことが重要です。発症直後は意識障害もあり経口摂取が困難となりますが、早期から経口摂取に向けて嚥下評価を行い、誤嚥に注意しながら援助を行うことは重要です。高次脳機能障害は大脳半球の障害で発症し、梗塞部位によって失語・失認・失行・半側空間無視などさまざまな症状があります。患者それぞれの高次脳機能機障害による生活への影響を考えて、患者が危険やストレスなく過ごすことができる看護を考える必要があります。広範囲大脳半球脳梗塞患者は、機能障害や治療によりベッド上で活動量が低下した生活を行う時間が長いため、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)などの廃用症候群の予防に注意する必要があります。さらに多くの広範囲大脳半球脳梗塞患者は、今後も障害を残したまま生活を送らなければならない可能性があるため、急性期では患者自身が自己の障害を認識し、患者や家族が今後の生活を考えられるような支援も必要といえます。
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