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6(1126)BRAIN NURSING 2019 vol.35 no.12 せん妄と聞くと、多くの看護師は「夜勤での患者さんの対応がむずかしい」「術後に患者さんの様子が突然おかしくなった」「患者さんが大声で叫ぶ・怒る」など、さまざまな場面が思い浮かぶと思います。また、患者さんの安全を守るために、やむを得ず家族の同意を得て身体抑制をした結果、さらに患者さんの状態が悪化してしまったなど、対応にむずかしさを感じている人が多いのではないかと思います。せん妄は、臨床では非常に多く認められる症状の1つといわれていますが、どのような定義がなされているのでしょうか。 せん妄について小川1)は、原因を問わず脳機能が低下することによって起こる症状であり、「急激に生じる、注意障害を中心とする精神神経症状を出す病態全体を指す」と述べています。 次に、せん妄の診断基準を見てみましょう。日本でもっとも多く用いられているせん妄の診断基準は、アメリカ精神医学会発行の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』2)によるものです。 DSM-5の診断基準は5項目で記載されています。せん妄の診断基準をもとにまとめてみると、表1のようになります。 つまり、せん妄とは患者さんの身体に何かのせん妄を引き起こす原因があって生じるものです。症状としては、注意や意識の障害が認められ、記憶や見当識障害などの認知の問せん妄の基本的な知識聖マリア学院大学看護学部看護学科講師 小お浜ばまさつきせん妄の定義11.せん妄になると、「注意や意識の障害」が起こる。見当識が低下したり、注意集中が保てなくなる。2.せん妄の症状(注意や意識の障害)は、「短期間のうち(数時間〜数日)に、今までの注意や意識のレベルが変化」する。なかでも、「1日のなかでも症状が変化する」傾向があるのが特徴。3.せん妄は、認知の障害をともなう。その例としては、記憶障害、見当識障害、言語障害などがある。4.せん妄は、患者さんがすでにほかの神経認知障害を有している場合(例えば認知症や高次脳機能障害など)は、そういった疾患の症状としては説明できないし、昏こん睡すいのように覚醒が著しく下がって起こるものではない。5.せん妄は、病歴や診察・検査の結果から、患者さんに起こっている症状が、医学的な疾患や複数の原因などの「直接的な生理学的結果によって引き起こされたという証拠がある」場合に診断される。表1 せん妄の診断基準

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