42OPE NURSING 2016 春季増刊 人工肺は熱交換部とガス交換部が一体となっており、手術手技や体外循環時間に合わせて灌流血温度を調節したうえで酸素加が行われる。 熱交換部では、冷温水槽から循環される冷温水が金属のベローズや管または合成高分子の中空糸の中を通り、その外側を血液が灌流することで熱交換される。 ガス交換部では、酸素ブレンダーにより酸素濃度と酸素流量を調節したガスが数千~数万本の多孔質中空糸の中を通り、その外側を血液が灌流することでガス交換が行われる。 貯血槽は、静脈血貯血槽と心内血貯血槽が一体となっており、一時的に血液を貯留することで送血側へ空気を送らず、輸液や輸血、薬剤を投与する場所となる。 静脈血貯血槽部は、術野の切開部またはカニューレ挿入部から引き込まれてくる空気や血液凝集物を除去するため、除泡網やスクリーンフィルターが組み込まれている。心内血貯血槽部は、術野から吸引される血液に混入されてくる組織片や血液凝集物、異物などを除去する不織布およびスクリーンフィルターが組み込まれている。 心筋保護液供給回路は、酸素加された血液と心筋保護液を一定の割合で混合させ(一例として、血液:心筋保護液=4:1)、熱交換器により4~10℃に冷却(心停止時)または36℃に加温(心拍再開時)して心臓に注入するための回路である。心筋保護液には、心筋の活動を停止させる高濃度のカリウム(K)や心筋のエネルギーを補うための糖分、グルタミン酸などが含まれている。 血液濃縮回路は、ローラーポンプを使用して脱血側から血液濃縮器を介し貯血槽へ循環する。血液濃縮器では、血液が合成高分子の中空糸の中を通り、出口側をクレンメで絞ることにより内圧を高め、水分を漏出させ除水する。また、多量の補液と除水を繰り返すことで、電解質の補正や血管作動性物質の除去を行うことができる。ほかにローラーポンプを使用せず、送血圧力を利用し送血側から貯血槽へ循環するものもある。人工肺(熱交換器)酸素ブレンダー温度プローブ動脈血静脈血熱交換部ガス交換部冷温水槽貯血槽輸液・輸血ポート貯血槽出口ポートサクションポート心内血貯血フィルター(不織布など)心内血貯血フィルター(30~40μスクリーンフィルター)脱血ポート静脈血貯血フィルター(40μスクリーンフィルター)脱血貯血槽内流出部に除泡網などを取り付けているものもある
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