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OPE NURSING 2017 春季増刊18 まず、循環器系合併症を知るには正常な循環を知る必要がある。循環の主な役割は、体組織の必要に応じて、そこへ栄養素を運び、そこから代謝産物を運び去り、身体の一部からほかの部分へホルモンを運搬することである1)。そのために心臓、血管、血液(体液)が存在する。 組織に栄養素を送り届けるのが血液で、液体である血液を動かす原動力は圧力、すなわち血圧である。では、血圧はどのように作られるのか。「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」である。すなわち、血圧は心臓と血管により形成される。適切に血圧が維持できれば、多くの場合、組織は生きていくことができる。「適切な血圧」とは、どの範囲であろうか。血圧が上がれば血流量は増加し、下がれば減少する。しかし、それでは臓器は常に出血と虚血の危険にさらされる。このため、脳などの重要臓器には自動調節能があり、平均動脈圧(拡張期血圧+〔収縮期血圧-拡張期血圧〕/3)で60~130mmHg前後の範囲にあれば、臓器血流がある程度一定に保たれる。すなわち、平均動脈圧が60mmHgより低下すれば臓器虚血のリスクが、逆に130mmHg以上になれば脳出血や心不全のリスクが生じるわけである2)。血圧を作り出す重要な要素である「心拍出量」は何によって規定されるのか。これは前負荷(静脈還流量≒循環血液量)、後負荷(末梢血管抵抗)、心収縮力、心拍数の4つの因子によって規定される。心臓が適切に心拍出量を出すにはどうすればよいのだろうか。POINT1正常な循環を知ろう!POINT2正常な血圧とは?血圧は心臓と血管により形成される!循環器系合併症はココに注意!◎福岡大学医学部麻酔科学教室助教 冨永健二同 教授 山浦 健

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