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オペナーシング 2018年 春季増刊1781 そのまま集中治療室へ移動する × 手術室は少なからず慌ただしい環境であり、ある程度迅速性が求められるのは事実だと思います。しかし、最も優先されるべきは患者安全であり、目の前で起きていることを冷静かつ的確に把握し、適切な対応をとることが重要です。本症例の場合、手術自体は無事終わり、抜管までいたりましたが、ドレーン排液が多いことが発覚しました。「まぁ、大丈夫だろう」とそのまま退室したい気持ちもわかりますが、肝硬変がベースにある患者の肝切除術では術後出血の高リスクであることも考慮すると、やはりここは立ち止まるべきです。 ドレーンの排液量と経過時間を正確に記録し、排液量の増加のスピードを把握しましょう。病棟管理においては100mL/時以上の排液が6時間以上持続するというのが、再手術に踏み切る1つの目安です。しかし、手術室において何時間も様子をみるのは現実的ではないため、あくまで1つの目安として排液量のスピードを10〜30分程度で推し量りましょう。2 バイタルサインをチェックする ○ ドレーンの排液量が増えたからといって、必ずしも現時点での出血を表しているとは限りません。選択肢③でも述べますが、その性状によっていろいろな場合が想定されます。しかし、もし現時点で活動性の出血があるのであれば、バイタルサインに変化が現れてくるはずです。具体的には、収縮期血圧が下がって、心拍数が上がってきます。もちろんバイタルサインはさまざまな因子の影響を受けるため、その解釈には注意が必要です。特に本症例のような抜管直後などは、血圧も心拍数も高いことが多いです。そのため、徐々に血圧が下がっていく、心拍数が上がっていく、といった経時的変化を追うことが重要になります。 また、収縮期血圧と心拍数から出血量を推定できる指標としてショックインデックス(shock index;SI)があります(表1)。正常値は0.5程度で、出血量が増えるに従って値が上昇していきます。絶対的に信頼できる数値というわけではなく、ほかのバイタルサインと同様にさまざまな因子の影響を受けてしまうため、あくまで目安として考え、その経時的変化をフォローしましょう。何が起きている? なぜこう動く?

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