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超高齢化社会の日本では、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、高齢者の手術が増加することが予想される。またDPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System;診断群分類に基づく1日当たり定額報酬算定制度)を導入している多くの病院では、平均在院日数を減らして効率性係数※1を上げ、かつ重症患者を増やして複雑性指標※2を上げることが病院経営のために求められている。これからの手術室では、基礎疾患を複数もつ高齢者手術の増加が予想されるため、術後合併症の発症をできるだけ抑え、在院日数を減らす努力が必要となる。この努力は手術を受ける一人ひとりの患者さんが元気に退院するために必要である。※1:効率性指数:効率よい診療を評価する数値。在院日数の指標※2:複雑性指数:複雑な傷病の診療を評価する数値。患者構成の指標術前の基礎疾患による重症度は、米国麻酔科学会(ASA)PS分類で評価する(表1)1)。ASA-PS分類のクラスⅠやⅡより、クラスⅢやⅣのほうが、術後30日までの合併症の発症率や術後死亡率が高いことが知られている。術後の在院日数の増加に関係する合併症は、術後感染症、肺炎、心筋梗塞、肺塞栓症、認知機能障害、イレウス、出血などさまざまなものがあるが、これらの重篤な術後合併症の発症は、ASA-PS分類だけでなく、緊急手術の有無や手術の種類にも影響される。例えばASA-PS分類がクラスⅢの患者で、手術範囲が広範囲で手術侵襲が大きい緊急開腹手術は、イレウスなどの重篤な術後合併症をきたしやすくなる。だからナースは、術前外来や術前訪問で患者の基礎疾患の疾患名だけでなく、その基礎疾患のために日常生活がどのように影響されているかを聞き取り、ASA-PS分類で評価する。例えば、呼吸器疾患のために階段を上がるときに息苦しさを感じる場合は、ASA-PSⅢである。基礎疾患のある患者さんの周術期管理にはどんなリスクがある?麻酔科医の視点看護師の役割基礎疾患の周術期管理まずはおさらいQ&A兵庫医科大学麻酔科学・疼痛制御科学講座 主任教授 廣瀬宗孝「オペナーシング秋季増刊号」イラスト28オペナーシング2020年秋季増刊号

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