第1章 循環器・血管系疾患 1不整脈 どんな病態?刺激伝導系の異常や異所性の電気刺激により心臓の調律や心拍に乱れが生じ、脈の乱れとして感知される。先天性や加齢のほかに、さまざまな原因で生じる。徐脈性不整脈は、洞性徐脈、洞停止、洞房ブロック、房室ブロックに分けられる。洞停止、洞房ブロック、MobitzⅡ型以上の房室ブロックは失神や突然死の原因となるため、ペースメーカ植込みの適応である。頻脈性不整脈は洞性頻脈、心房期外収縮(PAC)および心室期外収縮(PVC)、上室性頻拍および心室頻拍(VT)、心房細動(Af)および心室細動(Vf)・心房粗動(AFL)に分けられる。心房細動・粗動や上室性頻拍にはカテーテルアブレーションが有効である。無脈性心室頻拍や心室細動は心停止の状態であり、生命の危険を伴うため、植込み型除細動器の適応である。 周術期管理のポイント 手術に伴うリスク痛み刺激による交感神経系の興奮、手術操作による神経反射、長時間および大侵襲手術における体液や電解質の異常は不整脈の誘因となる。 術前~術後をとおした周術期管理のポイント 重症不整脈は術前の精査が必要となる1)。ペースメーカや植込み型除細動器の適応があれば術前に治療する。術中は心電図のⅡ誘導を監視し、必要に応じて術後も継続する。適切な鎮静・鎮痛および体温管理で不整脈を予防する。 併存することでさらにリスクが高くなる基礎疾患WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群は術前のカテーテルアブレーションによる副伝導路の遮断が望ましい。QT延長症候群はトルサード・ド・ポワンツ(torsade de pointes)から心室細動に至ることがある。Bブルガダrugada症候群ではプロポフォールや局所麻酔薬が心室細動を誘発するとの報告がある2)。 手術が中止になる場合の判断ポイントMobitzⅡ型房室ブロック、完全Ⅲ度房室ブロック、有症状の心室性不整脈、心拍数が100回/分を超える上室性不整脈、有症状の徐脈、新規発症の心室頻拍があれば、術前に治療し、その後に手術を実施する1)。6時間以内に処置が必要な緊急手術はこのかぎりではなく、手術を実施しながらリスクの評価と治療を行う。心房細動では抗血栓薬の中止忘れが問題となりやすい。この疾患の周術期管理15オペナーシング2020年秋季増刊号
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