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第2章消化器内視鏡外科手術 A 食道・胃OPE NURSING 2021年 春季増刊 691 どんな術式? 適応と切除範囲 腹臥位で胸腔鏡を用い、胸部食道と周囲の縦隔リンパ節を切除する。適応は胸部食道がんで、一般的にがんの他臓器浸潤や胸腔内に激しい癒着が疑われる症例は除く。2 ポート位置・アクセスは? 中腋窩線上、第3肋間に5mmポート、第5肋間に12mmポート、後腋窩線上、第7肋間に5mmポートを手術操作用として挿入、後腋窩線背側、第9肋間に12mmポートをカメラ用として挿入する(p.71参照)。必要に応じ、肩甲骨角背側第6肋間に5mmポートを操作用として追加する。第1ポート挿入は、第5肋間から12mmトロッカーを用い、オプティカル法1)で行う。第1ポート挿入後、8mmHgのCO2気胸を行い、肺の虚脱を確認し、ほかのポート挿入を行う。3 開胸に移行するのはどんなとき? 手術開始時に胸膜癒着が激しい場合は、術野の確保が困難なため、すぐ開胸手術に移行する。また、術中、胸腔鏡操作で対処できない偶発症が発生した場合も開胸手術に移行する。 代表的な偶発症として、肺や気管の損傷と出血である。肺や気管は落ちついて対処できるので胸腔鏡下にリカバリーできることが多いが、ガーゼの圧迫でコントロールできないような大量の出血が起こった場合、即座に後側方開胸を行い、用手的に圧迫しながら、左側臥位に体位変換し、十分な開胸創を確保し、対処する2)。4 ドレーン留置位置 胸腔鏡操作が終了したら、後腋窩線上、第7肋間の5mmポート孔を利用し、ストレートの胸腔ドレーンを、先端が肺尖部背側に位置するように留置する。5 術中術後にみられやすい合併症 術中合併症として問題となるのは、前述の肺や気管の損傷と予期せぬ出血である。術後合併症は肺炎や無気肺、肺水腫などの呼吸器合併症が最も多く、重症化しやすい。そのほかに術後出血、循環不全、反回神経麻痺、吻合部縫合不全、乳び胸などがある3)。いずれも重症化すると致命的になるので、緻密な術後管理が必要である。引用・参考文献1) 棚瀬康仁ほか.肥満症例に対する婦人科腹腔鏡手術:第1トロッカー留置におけるオプティカル法の有効性.日本内視鏡外科学会雑誌.18(4),2013,453-8.2) 奥芝俊一ほか.“腹臥位胸腔鏡下食道切除術”.消化器外科 開腹術・内視鏡手術完全マニュアル.今本治彦編.オペナーシング秋季増刊.大阪,メディカ出版,2012,86-99.3) 齊藤卓也ほか.胸部食道がん手術後の検査画像.消化器外科ナーシング.18(9),2013,10-8.

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