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3Neonatal Care 2016 秋季増刊はじめに2016年9月長 和俊北海道大学病院周産母子センター診療教授 新生児の最大の特徴は、子宮内での胎盤呼吸から子宮外での肺呼吸へ適応することです。この適応がうまくできないと呼吸障害が発生します。早産児はこの傾向がより強く、呼吸窮迫症候群や新生児無呼吸発作などの呼吸障害を合併します。そのためNICUには、早産児を中心として、呼吸管理を必要とする赤ちゃんがたくさん入院しています。気管挿管による人工換気は赤ちゃんの肺にダメージを与えるので早期抜管を目指しますが、早期抜管を行うと無呼吸発作のコントロールに苦労します。酸素投与も肺にダメージを与え、多過ぎる酸素投与は未熟児網膜症を悪化させますが、少な過ぎる酸素投与は壊死性腸炎を増加し、脳の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。このように、NICUでの呼吸管理はとてもデリケートなものです。また、人工呼吸器などの機器は急速に進化しますし、ハイフローネーザルカニューラなどの新しい呼吸管理法も導入されます。たくさんの赤ちゃんが呼吸管理を必要としていて、呼吸管理には精密さが求められ、しかも日々進化するとなると、NICUの医療従事者には、新生児呼吸管理がとても重いプレッシャーに感じられます。しかし、新生児呼吸管理は基本さえマスターすれば決して難しいものではありません。 この「新生児の呼吸管理ビジュアルガイド」では、まず赤ちゃんの呼吸障害とその代表的な原因について解説しています。次に、最新式でしかもシンプルな人工呼吸器「Neocare 9000」を例に、新生児用人工呼吸器の基礎が理解できるように解説しています。人工呼吸器の各モードの解説の後には、トラブルへの対応を取り上げています。また、「さくっと理解できる ビジュアルガイド」ページを設けていますので、最初から順に読むのもよいですが、「ビジュアルガイド」を参考にしながら、まずは興味のあるところから読み始めていただくのもよいと思います。 図を多用することで理解しやすい構成となるよう工夫していますが、ご執筆はNICUの第一線でご活躍中の皆さまにお願いしており、非常に質の高い内容となっております。この1冊を通して、皆さまが新生児呼吸管理を「学び甲斐のあるもの」と感じていただければ、大変有難いです。
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