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VAD第  章32522017 秋季増刊国立研究開発法人 国立循環器病研究センター移植医療部医長瀨口 理 せぐちおさむ13VADのトラブルQ&A1.体外設置型VADの現状とポンプ血栓症 当院では、年間30〜40件のVAD装着を行っていますが(症例数ではなく、装着実施件数です。中には1例で体外設置型VADから植込型VADへの切り替え術の2件を実施する場合があります)、その30〜40%で体外設置型VADを装着しています。つまり、いまだ体外設置型VADを使用する機会は多く、近年、若年の広範心筋梗塞や劇症型心筋炎による心原性ショック症例に対するVAD治療の選択肢が循環器内科医の中でも認知されてきている現状では、この傾向はしばらく続くと考えています。 体外設置型VADが植込型VADに比して合併症が多いことはよく知られていますが、血栓塞栓症、特に脳梗塞につながるようなポンプ血栓症は、患者さんの予後ならびにQOLにとって非常に重要な1植込型補助人工心臓(VAD)が主流の時代になっても、bridge to recovery(BTR)やbridge to candidacy(BTC)目的での体外設置型VAD装着の機会は、いまだに一定の確率であります。体外設置型VADでは、看護を含めた医療上の問題点が数多くあると思いますが、血液ポンプへの血栓付着に対する観察ポイントと血栓付着時の対応について教えてください。当院では原則、体外設置型VADはNIPRO-VAS(ニプロ社)を使用していますので、これからの解答は、NIPRO-VASの場合です。血液ポンプへの血栓形成は、患者さんによりその程度の差はあるものの、一定期間装着している場合には、ほぼ全例において避けがたい事象です。しかしながら、その血栓がポンプから剝がれ、流血中に流れてしまうと、脳梗塞やそのほかの末梢臓器の梗塞につながることになります。したがって、医師側からすれば、まず①「血栓付着の有無」をしっかりと観察し、初期の小さな血栓付着を見逃さず報告していただきたいと考えます。そして次に②「血栓性状の変化(拡大傾向、可動性の有無)」を中心に観察し、付着した血栓が流血中に流れてしまう前に報告してください。1

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