労作性狭心症は、動脈硬化による冠動脈内腔の狭窄が原因で、安静時には胸部症状がないものの、労作時に胸痛などの胸部症状が出現する疾患です。冠動脈狭窄が存在すると、労作に伴う心筋の酸素需要の増大に見合うだけの冠血流が維持できなくなり、心筋の可逆的な虚血を生じて胸部症状が引き起こされます(図2)。 労作性狭心症の重症度分類は、カナダ心臓血管学会(CCS)分類が広く用いられています(表2)2)。労作性狭心症の病態生理 労作性狭心症の原因となる冠動脈狭窄は、動脈硬化の進行によって生じます。このため、労作性狭心症の患者さんは、脂質異常症、糖尿病、喫煙、虚血性疾患家族歴、高血圧症、慢性腎臓病などの冠動脈疾患のリスクファクターを複数有することが多くあります。これらのリスクファクターにより動脈硬化が進行すると、冠動脈壁にプラークや石灰化をきたし、内腔の狭窄へと進行します。労作性狭心症の検査 自覚症状から労作性狭心症が疑われる場合は、以下のような検査を実施して診断を行います。 ●標準12誘導心電図 労作性狭心症では、安静時の心筋虚血は顕著ではないため、異常所見が検出されないことがしばしばあります。逆に正常であっても狭心症を否定することはできません。 ●運動負荷心電図 問診から狭心症であるかの判断が難しく、かつ急性冠症候群(ACS)が否定できる場合に施行します。狭心症状の出現やST変化が認労作性狭心症表1 ● 狭心症の分類分類の視点名 称特 徴発作の誘因による分類労作性狭心症労作時に発作が起こる安静狭心症安静時に発作が起こる。多くの場合、冠攣縮性狭心症と同義発生機序による分類器質的狭心症器質的な冠状動脈狭窄を認める冠攣縮性狭心症冠状動脈の痙攣(攣縮)が原因である典型的な胸部症状の有無による分類顕性狭心症発作時には必ず胸部症状を伴う無症候性心筋虚血高齢者、神経障害を合併した糖尿病患者さんなどに多い臨床経過による分類安定狭心症発作の出現する閾値や頻度が一定である不安定狭心症発作の出現する閾値が急速に低下している、あるいは発作の出現頻度が増えている文献1より転載カテの適応疾患、合併症、薬剤について学ぼう ❶ 適応疾患2章HEART nursing 2018 秋季増刊 * 75
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