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29HEART nursing 2019 春季増刊心臓の解剖としくみ&心臓を知るための検査 胸部X線は、肺野の検査であると同時に、心拡大と肺うっ血の程度を確認する検査です。循環器領域に限らず、臨床の検査の中でも汎用される検査の一つで、非常に多くの疾患の診断に有用です。 胸部X線画像を見るにあたっては、必ず過去のX線画像と比較することが大切です。このとき、比較のためには撮影条件を確認する必要があります。一般的に、ポータブルX線は前胸部から背中に向けてX線を当てます。背部から前胸部に向けてX線を当てる通常の胸部X線撮影に比べ、心臓が大きく映ります。 心臓が拡大しているかどうかを表すのが心胸郭比(CTR)です。心胸郭比は胸郭の横幅の中で、心臓の横幅が占める割合です。全身の水分量が大きくなると、心拡大をきたします。心胸郭比が50%を超える場合、心拡大が考えられます。肺門から肺野にわたる血管陰影は、肺血流の増加やうっ滞により暗くなり、肺血流量が減少したときは明るくなります。 心陰影には凹凸があり、でっぱりを弓と呼び、右側に2つ、左側に4つの弓で形成されます。部X線でわかること胸心胸郭比(CTR)心陰影■右第1弓 上大静脈の陰影で、通常は直線的です。胸腺腫、縦隔腫瘍、上行大動脈瘤のあるときに異常陰影を示します。■右第2弓 右心房の陰影で、わずかに膨隆します。異常に膨隆している場合、心房中隔欠損症や心不全による右心房拡大を疑います。■左第1弓 大動脈による陰影で、動脈硬化症や大動脈瘤では異常膨隆を示し、大動脈縮窄症では欠如します。■左第2弓 肺動脈幹に一致します。動脈管開存症、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、バルサルバ洞動脈瘤破裂、僧帽弁狭窄症、狭窄後部拡張を伴う肺動脈狭窄症などのとき膨隆します。 ファロー四徴症、総動脈幹症および狭窄後部拡張を伴わない肺動脈狭窄では陥没します。■左第3弓 左心房または左心耳に一致し、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全などの左心房の拡張を呈する疾患で膨隆します。■左第4弓 正常では左心室の陰影です。純型肺動脈狭窄症、ファロー四徴症、心房中隔欠損症などでは肥大し、右心室の輪郭が左第4弓として映ります。 大動脈弁狭窄や大動脈弁閉鎖不全による左室肥大では、左第4弓が左心室の輪郭を弧状に示します。(原 明枝・石木良治)

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