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 広範前壁梗塞は、主に左前下行枝の近位部が閉塞した場合に生じ、左室前壁だけでなく前下行枝から分枝する中隔枝が栄養する心室中隔から対角枝が栄養する側壁近くまでの広範囲に虚血が及びます。そのため、虚血部位に対応して心電図変化が現れる誘導の範囲も大きく、胸部誘導では中隔を反映してV1から側壁を反映したV6まで全体に変化が生じます。また、側壁の変化を反映して四肢誘導のⅠ・aVLにも変化が現れます。本心電図で広範前壁梗塞症例の所見を確認してください( )。 通常心筋梗塞でのST上昇は上に凸になると前稿で述べましたが、実際は本心電図の所見のように下に凸ともとれるような波形で、ただ基線よりも高くなっている場合も多々存在します。 心筋梗塞によるST変化は、典型的には梗塞部位と対称となる部位に鏡面像としての対側性変化(reciprocal change)が現れるので、この変化を確認するようにしましょう。 本心電図では前壁(心臓の上側になる)と左室腔を挟んで反対側にあたる下壁を示す誘導(心臓を下から見る誘導図1)にST低下が認められています(p.126: )。このような対側性変化を認めれば、そのST上昇は本物でしょう。じっくり心電図を見ていこう!ポイント1広範前壁梗塞は、前壁中隔から側壁に及ぶ重症の梗塞ポイント2心筋梗塞のST変化では鏡面像を確認心室を心尖部方向から見た断面図図1右心室中隔中隔枝前下行枝右冠動脈の枝(後下行枝)回旋枝の枝(後側壁枝)左心室HEART nursing 2019 秋季増刊  127急性心筋梗塞の心電図はどんな変化がある? 第1章第3部

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