副作用や注意点◦主な副作用は、皮下投与時の注射部位の局所反応(疼痛・紅斑・腫脹・熱感・硬結・掻痒感など)、頭痛、下痢、ほてり、四肢痛、悪心、潮紅、顎痛、倦怠感、不眠症、血小板減少、浮腫などが報告されています。◦重大な副作用としては、血圧低下・失神、出血、血小板減少、好中球減少、血流感染、注射部位の局所反応などが報告されており、異常を認めた場合にはすぐに主治医に連絡するように説明しましょう。患者さんへの指導ポイント◦妊娠中の安全性は確立されていません(動物実験では骨格変異の報告もある)ので、妊娠または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。授乳に関しては、動物実験で乳汁中に移行することが報告されており、授乳は行わないように指導してください。【自己管理】◦退院後は、自己管理となるので、入院中にカテーテル管理・薬液調製法・ポンプの使用法(アラーム時の対応法含め)などについて、患者さん本人だけでなく、家族に対してもしっかりと指導を行うことが重要です。◦トレプロスチニルは中性に近く(pH=6.1~6.6)、静脈内投与の場合はエポプロステノールよりも感染リスクが高いことが知られているため、カテーテル管理・薬液作製時の衛生管理の徹底が必要と考えます。アルカリ性のエポプロステノール専用溶解液を希釈液として用いることで感染のリスクを減少できることも知られています。◦投与中断は肺高血圧症の急激な増悪などの生命に関わる可能性があります。緊急時にすぐに連絡できるようなホットラインを作るとよいでしょう。【皮下投与の痛み】◦注射部位の疼痛は必発でありほぼ全例に認め、疼痛コントロールが皮下投与成功のカギといえます。起こりうる副作用とその対処法を事前に話しておくこと、鎮痛薬(非オピオイドから場合によっては強オピオイドまで)は躊躇せずに使用することが重要と考えます。◦そのほか、「注射部位は前回と近い場所を選択する」「疼痛は差し替え後数日が最も強くなるため留置針の交換回数をできるだけ最小限(3~8週ごと)とする」など患者さんごとに最もよい対応方法を一緒に考えてあげましょう。◦毎回の注射以降、何日目に痛みが発生したか、どの注射部位が痛くなったか、どの薬剤が効果的であったかなどを把握するために、日誌をつけることをおすすめします。 図4 持続静脈内投与カテーテルを静脈内に留置精密輸液ポンプ 図5 皮下投与精密持続点滴装置第9章肺高血圧治療薬HEART nursing 2020 春季増刊 175
元のページ ../index.html#19