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 循環器疾患に関わっているスタッフであれば、「心不全の患者さんは息が苦しくなる」ことは誰でも知っているかと思います。では、なぜ息が苦しくなるのでしょうか? 肺水腫が起きるから……。では、なぜ肺水腫が起きるのでしょうか? FILE1では、左心不全で呼吸困難が起きる理由について、わかりやすく解説してみようと思います。右心不全については他稿を参照してください(p.51)。 呼吸困難はどうして起きるのでしょうか? 人間の呼吸は、肺でのガス交換と、それを制御する中枢(脳)と末梢(頚動脈や、胸郭にあるセンサー)によって成り立っています。ガス交換がうまくいっていないことを脳が感知すると、呼吸を大きくしたり、呼吸数を増やしたりしてガス交換を促進しようとします。末梢のセンサーが「これくらいで呼吸しています」と脳に報告しているとき、換気が不十分であれば、脳は「もっと呼吸したい」と感じます。この末梢と中枢のミスマッチで生じる違和感を呼吸困難とよびます。末梢のセンサーは主に低酸素血症、高二酸化炭素血症を呼吸不十分として感知しますので、間の理屈を飛ばすと、低酸素血症または高二酸化炭素血症≒呼吸困難、といえることになります。 左心不全では肺うっ血、肺水腫が生じます。肺胞上皮がむくんでいる、肺胞に水が溜まっている状態です。肺胞上皮がむくんでいれば、ガス交換の効率が悪くなります。酸素はもともとガス交換の効率が悪い気体ですので、ある程度肺うっ血が進むと酸素を取り込めなくなります。一方、二酸化炭素は比較的ガス交換の効率が良い気体ですので、軽い肺うっ血であれば問題ないことが多いです。しかし、重症になるとガス交換ができなくなり、血中から追い出せなくなります。このようにして低酸素血症、高二酸化炭素血症が起きて(起きそうになって)、呼吸困難が生じます。 では、左心不全で肺うっ血が生じる仕組みを考えてみましょう。呼吸困難≒低酸素血症、高二酸化炭素血症左心不全で肺うっ血が生じる仕組み1心拍出は、前負荷、ポンプ機能、後負荷の3つの要素で決まる心疾患で胸以外の症状が起こる!?第 1 章22 * HEART nursing 2021年 春季増刊

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