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心臓は血管脈を通じて全身の細胞へ、酸素をはじめとする代謝エネルギーを供給しています。それは何となくわかります。しかし一口にエネルギーといっても、それぞれの臓器でその必要度が異なります。またそれは身体が置かれた状況によっても大きく変化します。血液を介して供給される物質はエネルギー源だけではなく、内分泌ホルモンや免疫をつかさどる抗体や単核細胞も含まれています。最近では短いRNA(核酸の一種)やさまざまな信号を媒介するタンパク質も数多く含まれていることがわかってきました。そんなこと全部を含めて心臓・血管を通しての組織・細胞との循環、言い換えれば“コミュニケーション”が成り立っています。そう考えると、心臓の調子が悪く十分な血液の循環を行えない状態(これを心不全といいます)だったり、動脈硬化や炎症のために血管に狭い部分やジクジクしているところができたりすると、臨機応変に調節できていた循環がうまくいかないことになります。つまり、心臓や血管の病気はそれだけの問題ではなく、それとつながっているあらゆる臓器に影響を及ぼすということです。そんな心臓・血管と諸臓器との関係は、「何でそんなことになってしまうのか!」という病気のメカニズム、すなわち病態を理解するうえでとても重要なのです。そのような「聞いただけでもややこしそう!」なテーマをイラスト中心にやさしく丸わかりさせてくれるのがこの春季増刊です。心臓と腎臓とが密接に関係しており、しかも負のスパイラル関係にあることは「心腎連関」という単語になりましたので、ご存じの方も多いでしょう。でもそれだけではないのです。そうですよね、心臓と血管はあらゆる臓器とつながっているのですから。そんな相互に関連する病態への知識が深まっていくと、あなたは心臓・血管病の奥義を極めたエキスパートになれます。若手の専門家がわかりやすく解説してくれていますので、どこからめくっていただいても読めます。「あれ、なんでやろ?」と思うことに出くわしたら、ぜひこの増刊にたずねてみてください。木原康樹神戸市立医療センター中央市民病院 院長/広島大学 名誉教授編者のことば

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