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隠れた疾患を見逃さない! 押さえておきたい問診・観察ポイント 救急外来において、見逃してはならない疾患の筆頭ともいえるのが急性心筋梗塞(ACS)です。一般に突然の胸痛で発症しますが、心窩部痛や上腹部痛といった主訴で来院することもあります。心電図は侵襲のない簡単な検査ですので、中年以降の心窩部痛や上腹部痛の場合には積極的に行うべきです。特に虚血性心疾患のリスクファクターである脂質異常症、糖尿病、高血圧症、肥満、喫煙歴、虚血性心疾患の既往がある場合には必須と考えた方がよいでしょう。また、腸間膜動脈閉塞症など虚血が原因となる疾患を疑う場合には、心電図で心房細動の有無を確認することが望ましいです。腹痛でも心電図は重要Pick up ② 前記の問診のポイントの第1項目はonsetでしたが、特に突然発症の激しい腹痛は要注意です。一般に突然発症の強い痛みでは、裂ける(大動脈解離)、捻ねじれる(卵巣捻転、結腸捻転)、破れる(大動脈瘤破裂、肝がん破裂)、詰まる(急性心筋梗塞、腸間膜動脈閉塞症、総胆管結石症、尿管結石症、絞扼性イレウス)、穴が開く(消化管穿孔)といった機序が想定されます。多くは重篤な疾患で、治療には緊急手術やIVRなどが必要となります。問診の際は突然発症かどうかを意識して聞きます。発症時に何をしていたかを具体的に言えれば(例えば、テレビを見終えてトイレに行こうとしたら痛くなった)、突然発症の可能性が高いといえます。発症前後の状況はなるべく詳細に聞くのがよいでしょう。突然発症の激しい腹痛は要注意Pick up ①かをみるtapping painは患者への侵襲が少なく、腹膜刺激症状と同等と考えられています。診察時の注意点として、高齢者は腹部所見が出にくいです。所見が弱いからといって重篤な疾患が否定できるわけではありません。高齢者の腹痛は予後が悪いこともあり、慎重な対応が求められます。 また、圧痛の部位により想定される疾患を絞り込むことができるため、部位を意識して診察することが重要です。触診に先立って、患者に一番痛い部位を聞きます。指1本程度まで圧痛部位が限局できるのか、全体が痛いのかを確認します。患者が痛みを訴える部位以外から触診を開始し、最後に痛みの部位を優しく圧迫します。《引用・参考文献》1)急性腹症診療ガイドライン出版委員会編.急性腹症診療ガイドライン2015.東京,医学書院,2015,188p.静岡赤十字病院 救命救急センター長・救急科 部長 ● 中田託郎Emergency Care 2017 夏季増刊 * 431 章-腹痛7

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