M061751
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 くも膜下出血は、脳の表面を覆う膜の1つであるくも膜の下に出血をきたす疾患です。原因の約85%は脳動脈瘤の破裂です。くも膜下出血は死亡率が約30%とされ、約40%で後遺症を伴います。患者には①再出血、②遅発性脳虚血、③水頭症と3つの異なる病態が襲いかかります。 ①再出血:一度破裂した脳動脈瘤は高率に再破裂を繰り返します。破裂するたびに頭蓋内圧が急激に上昇したり、脳実質が直接損傷を受けるなどして脳が不可逆的なダメージを被ることがあります。再出血は出血当日が最も起こりやすく、破裂脳動脈瘤が未処置の場合、2週間以内に約20%の患者が再出血により死亡します。 ②遅発性脳虚血:くも膜下出血発症後10日前後に脳梗塞をきたすことがあります。出血後約4日目〜約2週間起こりうる脳血管攣縮(くも膜下出血にさらされた脳動脈が収縮して狭窄する)や、出血後1週間程度持続する電解質異常と尿量過多(中枢性塩類喪失症候群)などが原因とされます。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では約70%に脳血管攣縮が生じ、約15%に脳梗塞を発症します。 ③水頭症:くも膜下出血により脳脊髄液の循環が障害され、頭蓋内に脳脊髄液が異常に貯留して脳機能障害を生じる水頭症をきたすことがあります。くも膜下出血直後に生じる急性水頭症と、発症1カ月前後で顕在化する交通性水頭症があります。くも膜下出血の患者の約10〜20%で髄液ドレナージ(排出)術が必要となります。どんな疾患?再出血(破裂)脳血管攣縮による脳梗塞髄液循環障害による水頭症くも膜下出血こ ぶ血 管血 管血 管血 管EmergencyCare2017夏季増刊*552 章くも膜下出血1神経系疾患1

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