M061751
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救急患者に関わる医師・看護師を含めた医療スタッフにおいて、患者の訴えや全身状態、バイタルサインなどから、その緊急度、重症度を速やかに察知し、処置を行える能力が求められる。しかしながら、その際にある程度疾患を想定しながら対応することが必要である。救急外来には、病名のついた状態で運ばれている患者はいない(他院からの転送の症例では、病名がわかっているが、これが必ずしも正しいとは限らず、誤診のピットフォールにはまり込んでしまうことがあるので注意が必要である)。患者は何らかの訴えを持って救急外来を受診することになる。その際にその主訴からある程度鑑別を考えられなくてはならない。そして、その鑑別疾患から、診断を確定するために何らかの画像検査を行うことが多い。どのような訴えの場合にどのような画像検査に進むべきなのかを頭に入れておくと、患者のケアおよび検査への準備がスムーズになる。また、どのような疾患であれば、どのような画像所見が得られるのか、細かな画像診断の知識までは不要であるが、キーとなるような所見を知っておくことで、診断が得られることがある。画像診断は医師だけのものではない。夜間や休日においても、救急患者は時間を選ぶことなく来院するため、画像診断の専門家(主に放射線科医)が不在な状況もある。その場合、担当医が診断するのはもちろんのことであるが、そのほかのスタッフもともに画像を見て、判断することで、見落としを減らすことができる。複数の眼で確認し、少しでも精度を高めることが求められ、翌診療日に再度、画像診断の専門家の目を通すことで、質の高い診療を行うことができる。第1章では、症状から考えられる代表的な疾患を取り上げ、どのような所見がキーとなるのかに関してまとめられている。第2章では、それら代表的な疾患の知識を深めるために、詳細が加えられている。第1章で鑑別を考えたのち、その疾患の詳細を第2章で学んでいただければ、診療の質が向上すると思われる。済生会横浜市東部病院 救急科 部長船曵知弘はじめに
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