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256Emer-Log 2019 夏季増刊解説虫垂炎が疑えるか? 虫垂炎は典型的には糞石やリンパ節腫脹のため管腔が閉塞し、内圧が上昇、蠕動運動が亢進します。食思不振が先行し、次いで心窩部痛や臍周囲の痛みが出現、その後に嘔気・嘔吐、痛みが右下腹部へ移動、発熱、WBC増加の経過をたどります。 しかし、このような典型的な症例は半数ほどで、症状が出そろわないこともよくあり、胃腸炎や便秘と間違って診断されることもあります。さらに、痛みをうまく訴えられない小児や痛みに鈍い高齢者、精神疾患患者、脊髄損傷患者、虫垂の位置が移動している妊婦などでは診断が難しくなるのは言うまでもありません。 虫垂炎の病歴、身体所見の精度は、表1に示すように診断や除外に寄与する特異度や感度の高いものはいくつかあります。しかし、右下腹部痛や板状硬は憩室炎でも出現し、有名なpsoas signは特異度が高く、認められれば虫垂炎の可能性は高いですが、感度が非常に低く、所見がなくても虫垂炎の除外はできません。嘔吐後に腹痛が出現する場合は虫垂炎を除外できますが、腹痛後に嘔吐する胃腸炎との鑑別はできません。また、血液検査では虫垂炎患者の2今回は病歴と身体所見から虫垂炎が疑わしい症例だったね。エコーを行ったけど所見はどうかな? これで外科の先生に声をかけてもいいかな?指導医腫れた虫垂が見えているような……気がしますが自信がないです。虫垂炎の診断でエコーが使えるのはわかっているんですが、エコーで虫垂だと思ったら小腸やリンパ節だったり、探しても探しても虫垂が見えないと思ってCTを見ると腹壁のすぐ下に大きな虫垂があったりで……。やっぱり虫垂炎は全例CTだと思います。若手医師今回は男性だけど妊婦や小児も虫垂炎になるからね。全部CTは困るんじゃないの。ナース……はい。エコーでも診断的に特異的な所見があるから見ていこうか。

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