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Emer-Log 2020 夏季増刊  15Ⅰ 脳血管疾患など1 くも膜下出血 まずは全身状態を安定させた上で頭部CT検査に向かうことになります。この「安定化」が最大のキーになります。 本症例はまず、肺水腫に苦しめられています。この肺水腫の原因をどう鑑別するかが決め手です。上述の通り、虚血性心疾患による心原性肺水腫とは特に鑑別を要します。本症例は逆たこつぼ型心筋症でしたが、臨床ではくも膜下出血ではたこつぼ型心筋症を呈することをよく経験します。このときにST上昇を認めることから、STEMI(ST上昇型心筋梗塞)であると判断されることもあります。緊急冠動脈造影を施行され、偶然冠動脈の高度狭窄を認めたために経皮的冠動脈形成術を施行され、この際にヘパリンを相当量使用されたことで再出血をきたし、最悪の転帰をたどったという事例さえ聞いたことがあります。 本症例のように、発症がけいれんであること、脳卒中の既往があることなどから神経原性肺水腫を早期に鑑別に挙げ、なるべく早い段階で頭部CTにたどりつきたいところです。 なお、本症例においては付き添いの友人が「脳梗塞の既往」に言及したことによってかなり方向性を見誤りかけた部分もあります。一般人にとっては脳卒中の種別、「くも膜下出血」「脳出血」「脳梗塞」の差はかなり曖昧であり、これに振り回されることは臨床現場でしばしば経験すると思いますので、この点にも注意を要します。すべての患者において、救急医は一般的にA→B→C→Dという治療の流れを原則として診療を進めていくと思います。 本症例ではAについては大量に嘔吐していたことから気管挿管を実施しました。その後、大量の液体が吸引できましたが、これはキリがないほどでした。冷静な目で見ると、泡沫状のやや血性の液体であり、このことから、肺水腫に伴うものであると想起できるとよいでしょう。Bもhigh PEEPを必要とする状態にあり、SpO2は一時的に40%台まで低下したところからなんとか70%台まで持ち直すことができたので、その時点でCT室に向かい検査の流れ鑑別診断の決め手!治療の流れ

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