16 Emer-Log 2020 夏季増刊ました。AもBも完全に改善させているわけではありませんが、このまま肺水腫で生命の危機に陥る状況からなんとか最低限の安定化を果たした時点で原因の特定のために必須な頭部CTを実施することとなりました。逆に言えば、一般に言われる「安定化」は決して、「完全なる改善」ではないということを知っておくべきです。例えば、腹腔内出血でCの異常があるときには、術前検査として腹部CTを実施したいところですが、Cが正常化しないからといってCT室に向かわなければジリ貧になっていくことは自明の理です。ここでいう「安定化」とは正常範囲内に入れることではなく、検査に耐えうるバイタルを維持できることであると認識しなければなりません。実はこのとき、一緒に当直していた循環器内科医と呼吸器内科医はECMO(体外式膜型人工肺)導入を主張しましたが、「頭蓋内病変だけは確認したい」と説得してCT室に向かった経緯があります。完全なる正常化を目指していたら方針を誤ったかもしれません。「後出しじゃんけん」になってしまうかもしれませんが、本症例は発症様式、気道内から泡沫状の液体、エコー所見での逆たこつぼ型心筋症様の壁運動などを総合的に判断して、「神経原性肺水腫」を念頭に処置していく必要がありました。目の前のA、Bの異常に個別にとらわれていると、病態の全体像を見失い、治療全体の方向性を見失いかねません。目の前に起こっている事象を一元的に説明できる病態をまず考え、診療を進めていくことが必要です。症状に対するマネジメント1. 嘔吐が原因ですので、挿管までは吐物による気道閉塞に注意します。吸引の準備が重要です。2. けいれんによる二次的外傷を防ぐため、環境整備、安全確保に努めます。円滑な診療の担保複雑な病態であるほどチーム内の情報共有を密にして、検査・治療の流れを全員が把握してスムーズに実施できるようにしましょう。NURSING POINT!ナーシングポイント
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