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脳神経外科学は,新しいテクノロジーの応用によって,飛躍的な進歩を遂げてきました.CTやMRIなどの革新的なイメージングの開発は,脳神経外科学の世界をまさに一変させました.神経内視鏡や血管内治療の普及は,より低侵襲性を求める次代の趨勢と合致して,急速に普及し,まさに脳神経外科治療は,マルチモダリティ全盛の時代を迎えています. しかし,現在においても,脳神経外科の華は,マイクロサージェリーではないでしょうか? 私も,学生から研修医時代に血管吻合の練習を始めた頃,マイクロ鑷子を持ったときの胸の高まりを,昨日のことのように思い出します.手術は,見取り稽古とよく言われますが,セットアップから始まり,体位取り,皮切,開頭,硬膜切開,くも膜切離,血管剥離など,段取りを理解することが第一歩です.その段取りのすべてに,手術器具と機器が密接に関係しています.術者や流派によって,好む器具・機器は異なりますが,一流の術者であれば,それぞれ明確な手術哲学に基づいて器具・機器を選択し,使いこなしています. 今回,岡山大学脳神経外科 菱川朋人先生の編集によって,新進気鋭のマイクロサージェリーのエキスパートが参集し,現在,国内で使用することが可能な手術器具と機器のコンセプトと使用法の実際を解説するという待望の本が上梓されました.良く練られた項目立てを見て,菱川先生の脳神経外科手術に対する思いが伝わってくるように思いました.岡山大学脳神経外科教授 伊達勲先生の「推薦のことば」にもありますように,「脳神経外科速報の臨時増刊」ならではのタイムリーな企画です.マイクロサージェリーの上達を目指す若手の脳神経外科医にとって,必携の本と言えるでしょう. 杉田クリップやニューロナビゲーターの開発を見てもわかるように,日本の脳神経外科医は,医療機器の開発にたいへん熱心です.しかし,近年,医療機器の市場は欧米勢に席巻されています.本書では,ところどころに「開発秘話」が織り込まれています.多忙な臨床業務の合間に本書を繙くことによって,一人でも多くの本書の読者が,将来,世界に向けて,革新的な医療機器の開発,普及に興味を持っていただくことができましたら,監修を担当した者としてこの上ない喜びです.九州大学大学院医学研究院脳神経外科教授飯原 弘二監修のことば
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