M081752
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脳神経外科手術は主に執刀医の技量,手術器具・機器,周術期管理から構成される.そして脳神経外科手術の治療成績は執刀医の技量によるところが大きいのは言うまでもないが,技量と手術器具・機器は表裏一体であり,言い換えれば両者のバランスが手術成功の鍵となる.手術器具・機器は技量の未熟さを補完するものではなく,術者の技量を惜しみなく発揮させるものである.そのためには手術器具・機器の特性を熟知して使うことが肝要である. 本著は日進月歩に発展する脳血管外科領域を中心とした手術器具・機器のアップデートな情報を臨場感あふれるかたちで読者に伝えることを主眼として企画された.開発のコンセプト(背景)を知ることは手術器具・機器を有効利用するうえで有用であり,いくつかの項では開発に携わられた先生に執筆を依頼した.セッティングで使用する機器,顕微鏡,はさみ,ピンセットなどの手術器具,クリップなど日常馴染みのある手術器具・機器からインテリジェント手術室,ロボットなど最新設備まで幅広く網羅している.実際の手術の現場で使用する手術器具・機器以外で,最近ではバイパスやCEAなどの手術トレーニングにも手術器具・機器が利用されるため,本著では手術トレーニングの詳細を取り上げた.術後のビデオ編集により技量と手術器具・機器のバランスを反芻することも成績向上において重要である.ビデオ編集機器も広義の手術機器と捉え,ビデオ編集のポイントを項の1つとして設けた.執筆者の先生方には本著の役割を実践書として依頼しているため,いずれの項も実用的で読みごたえのある充実した内容になっており,特に若手脳神経外科医に一読していただきたい. 多忙な日常診療の合間に時間を割いてくださった執筆者の先生方にこの場を借りて御礼申し上げる.最後に国立循環器病センター(現在の国立循環器病研究センター)時代にご指導いただき,このたび監修の労をとっていただいた九州大学・飯原弘二教授ならびに私が脳神経外科の道を志して以降現在に至るまで長きにわたりご指導いただいている岡山大学・伊達 勲教授に感謝の意を表する.岡山大学大学院脳神経外科菱川 朋人序文
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