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18 脳神経外科速報2017年臨時増刊作することである.ふだんの基本練習からそれを想定した道具の把持法,手の安定のさせ方,ひいては手首,肘,上半身の姿勢に至るまで検討して反復練習しておく必要がある. 図1は実際の深部縫合手術時の術者の手,および深部吻合練習(ハンズオンにて)時の姿勢である.バイオネット型の器具を第1-3指で把持し,第4-5指先を開頭縁などにそっと載せて安定を図る.手首の角度はneutralに保つのが,手振れを防ぐこつである.器具の操作有効部は平行に術野に入っている. 図2は,筆者が海外でのハンズオンにおけるデモを行っているときの写真である.講演で招聘され,デモは予定になく急遽頼まれたので,道具立てにも慣れていない,若干難しい状況である.手首はneutral position,肘は垂直に曲げ,背筋は伸ばし,書き物をするときのように自然な姿勢で操作するようふだんから心掛ける.より詳細にtipsを説明するなら,窮地に陥ってもこの姿勢,道具の持ち方なら,頭がたとえ真っ白になっていても体が自然に反応して手振れなく,精度の高い操作ができるというsweet positionなるものを自分で体得しておくべきである. 図3はふだんの卓上型顕微鏡での反復練習中の手の置き方,道具の把持の仕方の写真である.浅いところは練習の段階から,両方の道具を鋭角-平行に術野に入れて練習するのが有効であると考えている1). 外科手術手技向上のためのあらゆるトレーニングのなかで,顕微鏡下の微小血管吻合ほど実際の状況を詳細に再現し,練習効果が顕著である訓練体系はないと思われる.さらに,脳神経外科顕微鏡下手術はほとんどの工程がvideoに収まり,熟達者の手術をhigh resolutionのvideoで入手することも現在は可能である.正確な模範情報とそれを習得する練習体系があれば,その手術技術を完全にコピーすることは達成可能である. さらに,顕微鏡下の微小血管吻合の練習が多くの若手脳神経外科医に勧められる理由として,高倍率下の手技の精度,難度から他の技術にも応用可能な点が挙げられる.深く狭いスペースで微小血管を吻合する技術があれば,正確にドリリングしたり,深い限られたスペースの奥の腫瘍の止血を丹念にしたり,tightなssureを正確に分けたりできる1-7). バイパス技術のみならず,脳神経外科マイクロ手術の技術的な最終目標点の一つは,狭く深い術野の奥で正確な操作を安定して行うことである.バイパス術で言えば,それは深部血管吻合である.それを達成するには手暗がりをつくらず,2本の道具を挿入し,それを精度よく操1はじめに実際に目標とする手術を想定しつつふだんの練習を2血管吻合のトレーニング井上智弘 NTT東日本関東病院1
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