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して,瘤内塞栓術を施行した(図1,2).経過観察目的で行われた脳血管撮影にて,瘤内コイルコンパクションを伴う動脈瘤再増大を認めた(図3).脳動脈瘤の開頭手術1)シミュレーション画像と血管撮影(図4) 本動脈瘤を開頭術単独で治療する場合,剥離操作に伴った脳幹損傷やクリッピング時の穿通枝閉塞による虚血性合併症などを起こす可能性が高い.一方,血管内治療単独では根治性が担保できず,再発を繰り返す恐れがある.「バイパスによるbranch isolation+ステント併用コイル塞栓術」は,お互いの欠点を補完し得る,安全性かつ根治性の高い複合的外科治療である.Branch isolationを行うことで,動脈瘤はsidewall typeに形状変化し,根治性の高い血管内治療が可能となる.今回の動脈瘤でisolateすべき標的血管は左上小脳動脈(superior cerebellar artery:SCA)であり,血管内治療に先立って,浅側頭動脈(superficial temporal artery:STA)をdonorとするSTA—SCAバイパスを企図した.手術スケジュールとして,バイパス術後7日目に血管内治療を施行することとした.a.動脈瘤の局在:MRIT2強調画像(図4A) 脳底動脈先端部の大型動脈瘤は,大脳脚に挟まれるように脚間槽に存在する.b.Recipientarteryの状態:椎骨動脈撮影(図4B,Operator’simage) 動脈瘤の上方成分にはコイルが充填されている.Recipientである左SCAは動脈瘤体部に起始し,ambient cisternに沿って走行する.コツテントに沿ってsubtem-poral spaceに進入するため,当初顕微鏡の光軸は患者の頭側を向く(look up).SCAはテントの影に存在するため,テント切開後は顕微鏡の光軸は患者尾側を向く(look down).顕微鏡の光軸202脳神経外科速報2018年増刊図1初回治療前左椎骨動脈撮影右前斜位像脳底動脈先端部に,上方向きに突出した径17.6×14.6×12.6 mm(ネック10.7 mm)の大型動脈瘤を認める.瘤上後方にblebを認める.ドーム下壁より,左右上小脳動脈および右後大脳動脈が起始する.右後大脳動脈より,後交通動脈が一過性に描出される.図2初回治療直後左椎骨動脈撮影右前斜位像脳底動脈先端部動脈瘤内にコイルが充填されている.Blebを含む動脈瘤上方の造影が消失している.動脈瘤から起始する分枝を含む動脈瘤下方部分に造影領域の残存を認める.図3再治療前左椎骨動脈撮影右前斜位像瘤内に充填されたコイルマスの下方部分の造影領域が増大している.同部より,左右上小脳動脈および右後大脳動脈が起始する.右後大脳動脈P1部より上方に走行する穿通枝が描出される.
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