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脳神経外科疾患が細分化され以前よりも個々の領域の専門性が高まると同時に,近年では各々の領域を統合して俯瞰できる臨床能力の重要性が再認識される時代となりました.わかりやすい例で言えば,以前は内科・外科はそれぞれ別な主体として疾患を捉えていました.つまり,脳神経外科と神経内科は別,心臓外科と循環器内科は別,でした.しかし現在では,臓器・領域別に疾患を捉えてより体系的なアプローチをとるようになり,脳領域でも脳卒中センターなどが多くの病院で設立されています.これらは脳神経外科と神経内科とで専門をオーバーラップさせることによって知識と技術を高いレベルで統合させ,ひいては治療成績を向上させ,また研究を発展させようという変革です. 脳血管に関する知識は脳神経外科におけるすべての疾患の基本となります.そのような基本骨格をなす領域において,開頭術と血管内治療の知識と技術を統合することは,まさにこのような時代が求める必然の流れです.このたび遠藤英徳先生の編集のもと,『Hybrid Neurosurgeonのための 疾患別 臨床脳血管解剖テキスト』が上梓されました.遠藤先生は開頭術と血管内治療の両治療を行ういわゆる血管障害のHybrid Neurosurgeonであり,しかも両治療法に関する深い知識と卓越した技術を持っていらっしゃいます.遠藤先生は,「血管障害に関して多角的なアプローチができる次世代の脳血管外科医を若手医師が目指すために,よりよいテキストが必要」とお考えになり,このテキストを企画されました.取り上げられている疾患はしばしば経験されるcommon diseaseであり,実際の臨床に即応用できるでしょう.ご執筆いただいた開頭術および血管内治療の第一線でご活躍の多くの先生方には,開頭術と血管内治療のどちらかを選択する際のalternativeとしての考え方と両者をsupportiveに利用する考え方とをお示しいただいています.本書にて,治療遂行に必要な血管解剖が両治療を対比しながら学ぶことができると思います. ご存じのように,「Hybrid Neurosurgeon」という言葉の定義にはさまざまな議論があります.また,開頭術や血管内治療に特化すべきか,両治療とも行える外科医になるべきか,自らの進路に迷う若手の先生もいらっしゃるでしょう.しかしながら,知識を学ぶことは最終的に必ず患者さんの利益となるはずであり,本書が専門性を高めつつ両治療を統合するための実践的知識を得る一助となれば,監修者としてたいへんうれしく思います.埼玉医科大学総合医療センター脳神経外科大宅宗一監修のことば
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