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症例提示 IC paraclinoidの動脈瘤は,Iiharaらの報告1)にもあるように,①上向きで眼動脈とは無関係な部位であるanterior type,②下向きで血管撮影上はほとんどの症例で確認することはできないがsuperior hypophyseal artery(SHA)分岐部に発生していると思われるventral type,③眼動脈分岐部に発生するtrue ophthalmic type,④内側向きでその部位が内頚動脈窩にあるcarotid cave type,⑤これらの部位の混合型に分類される. 呈示する症例は,IC paraclinoidの動脈瘤の典型的な2つのタイプの動脈瘤である.症例1(図1 A)はventral typeで長径5.9 mm,ネック長4.2 mmの後方下向きの動脈瘤,症例2(図1 B)は一見内側向きに発生したcarotid cave typeであるが,後述する3D画像で眼動脈が動脈瘤ネックから分岐しているためtrue ophthalmic typeと分類した.Iiharaらの分類によるventral type,carotid cave typeは動脈瘤の発生方向と内頚動脈サイフォン部の走行が揃うことが多いが,anterior type,true ophthalmic typeは一致しないことが多く,さらにサイフォン部の屈曲の度合いや距離もさまざまで,手技の難易度が大きく異なってくる. 症例1はバルーンアシストテクニック,症例2はステントアシストテクニックでコイル塞栓術を企図したため,本稿ではこの2つの動脈瘤の治療脳動脈瘤1開頭手術と血管内治療の選択第1章脳神経外科速報2018年増刊11a.IC paraclinoidIC paraclinoidの血管内治療神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科 今村 博敏Hirotoshi Imamura          同上           坂井 信幸Nobuyuki Sakai疾患の概説 傍前床突起部内頚動脈瘤は(Fig.),海綿静脈洞遠位部から後交通動脈分岐部までの間に発生した動脈瘤を指し,発生部位によって眼動脈分岐部,上下垂体動脈分岐部,内頚動脈窩,内頚動脈前壁などに分類される.開頭手術においては,前床突起削除や頚部での頚動脈確保,視神経との剥離操作が必要となることが多く,手技的煩雑性や侵襲性が比較的高い.したがって,開頭手術を避け血管内治療を優先する傾向は強く,血管内治療を第一選択とする施設も多い.しかし,本動脈瘤には視神経圧迫症状を呈するような大型のものも多く,開頭手術によって根治を目指すべき症例も少なくない.それぞれの治療の長所,短所を十分に理解し,年齢,大きさ,症状,根治性,機能温存性といったさまざまな要素に鑑み,いずれか最適な治療法を選択することが重要である. (吉川雄一郎)

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