大宅 本日の司会を務めます,埼玉医科大学総合医療センターの大宅です.今日は,激論シリーズの第3弾ということで,聴神経腫瘍に対する治療に関して,外科手術代表として河野道宏先生,ガンマナイフ側より芹澤徹先生にお越しいただきました. 以前と比べると,当然,適応も変化してきていますし,治療法の進化もあると思うのですが,まず最初に,先生方が治療のときに大切にしていらっしゃるコンセプトについてお聞きしたいと思います.では最初に,河野先生からお願いします.河野 よろしくお願いします.まずバックグラウンドとして,コンセンサスが得られていると考えられる治療選択基準を表1に示します.問題となるのは,ここにあるような25mm(8mL)以下の中等度大の腫瘍で,これは手術・放射線治療・経過観察,その3つが症例ごとに検討されているのではないかと考えています. 我々の基本コンセプトは,「頭を開けることは,避けられるのであれば,それに越したことはない」というのが大原則です.私のもとには年間250人程度,聴神経腫瘍の新患患者が外来にやってきますが,半分は経過観察,放射線治療も15%ほどあり,手術になったのは40%弱です.手術適応には相当厳しいと自負しています. 手術適応ですが,我々は,①若い患者さん(おおむね40歳代くらいまで)のKoos Ⅲ・Ⅳ,②若い患者さんの聴力温存企図のKoos Ⅰ・Ⅱ(ただし最近はKoos Ⅰについては経過観察が多い),③若い患者さんの成長速度の速いKoos Ⅱ,④高齢者のKoos Ⅳ,特に正中を越えて40mmを超えるような腫瘍(内減圧を中心に手早く終える)を対象としています.若い患者さんには原則的には放射線治療を勧めていません.高齢者には逆に,「手術は最後の選択」と説明していて,経過観察や放射線治療が主体となります.大宅 小さい聴神経腫瘍を手術する場合の条件はどのようになりますか?河野 小さいものの手術については,いくつもハードルを設けています.若い患者さん,特に20〜30歳代ぐらいで聴力が保たれていて,聴力温存企図を図れるもの.また,成長,増大速度が速いことが分かっている場合には,それも条件にな聴神経腫瘍の治療 ―私の治療ポリシー「頭を開けることは,避けられるのであれば,それに越したことはない」ということを大原則として,厳密な手術適応を設けています.(河野)My Opinion河野道宏 先生582 脳神経外科速報 vol.29 no.6 2019.6.
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