激論シリーズ3ります.それに加えて,患者さんの理解が良くて強い手術希望がある場合に手術を行っています.成長速度によって治療方針が変わり得る40〜50歳代の患者さんであれば経過観察としていますが,逆に言うと,若くて治療方針が変わらないのであれば手術を勧めています.大宅 ありがとうございました.では,次に芹澤先生,お願いいたします.芹澤 よろしくお願いします.まず前提として言えることは,聴神経腫瘍は基本的に命を失う病気ではないということです.「手術とガンマナイフ,どっちが先か」というディスカッションをするよりも,「生涯,ADLを落とさないで生きていくにはどう組み合わせていくのがベストか」を考えるべきだと思っています. ガンマナイフは,基本的に中高年,特に50歳以上ぐらいが良い適応だと思います.若年者にガンマナイフrstで治療した場合には,長期治療成績が不明で,再発した場合に手術が難しくなるという問題もあります.また,私は原則として,KoosⅠは経過観察しています.大宅 KoosⅠであっても,聴力温存を企図してガンマナイフを行っている施設もありますね.芹澤 自験例の解析では,有効聴力が温存できるのは40%程度ですので,現時点ではKoosⅠ患者さんに対して聴力温存を目的としたガンマナイフ治療はお勧めはしていません.KoosⅡに関しては,有効聴力がなくかつ増大してている人だけを治療の適応としています.KoosⅢの中高齢者が良い適応で,診断された時点で増大が確認されればなるべく早期にガンマナイフ治療を受けることを勧めています.というのは,ガンマナイフの成績は腫瘍体積に依存していて,大きくなって脳幹を圧迫してからガンマナイフ治療を行った際に,照射後に顕著な一過性膨大を起こすと脳幹圧迫や脳神経症状が出現するリスクがありますのでなるべく小さいうちに照射したいのです.Koos Ⅳは原則適応外ですね.「生涯,ADLを落とさないで生きていくにはどう組み合わせていくのが患者さんにとってベストか」を考えて治療方針を定めるべきです.(芹澤)My Opinion芹澤 徹 先生コンセンサスの得られている聴神経腫瘍の治療選択基準表1◦若年者◦脳槽部の最大径が25-30mm以上の ▶手術 大型の腫瘍◦高齢者 ▶放射線治療◦全身麻酔のリスクの高い患者◦内耳道内腫瘍などの小さい腫瘍 ▶経過観察◦25mm(8mL)以下の中等大の腫瘍 ▶症例ごとに治療 方針を検討Koos Ⅰ:内耳道内に限局.Koos Ⅱ:内耳道から外に出ているが脳幹に達していない. Koos Ⅲ:脳幹に接している. Koos Ⅳ:小脳や脳幹を圧迫.脳神経外科速報 vol.29 no.6 2019.6. 583
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