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総論1030 脳神経外科速報 vol.29 no.10 2019.10.脳神経外科の多様性とsubspecialtyの意義大宅宗一1)Soichi OYA1)埼玉医科大学総合医療センター脳神経外科 〒350-8550 埼玉県川越市鴨田1981番地Ⅰ.はじめに 脳神経外科医としてのキャリアを語る際に,どのような観点で論じるかによって,多様ともいえるし比較的均質であるともいえる.ひとくちに脳神経外科といってもさまざまな切り口がある.ざっと挙げても,・臨床医学か,基礎医学か・大学病院で働くか,民間病院で働くか,プライマリケアか(最近では高い技術を身につけたのち自院を開業し,総合病院で専門の手術のみを行う米国式の選択も増えつつある)・直達手術か,血管内治療か,双方か・放射線治療か,リハビリか・国内留学か,海外留学かなど,多様な要素がある. これらは複雑に絡み合い,相反するようでいて両立も可能であり,さらに同じ個人内においても時間軸の中で入れ替わる.キャリアとはもともとは中世ラテン語の「車道」を意味し,競馬場や競技場のコースやトラックから意を転じて各人が辿る経歴を意味するようになった.現在では職業の遍歴,またいわゆる出世や成功をも表すようになった.キャリアとは「時間的持続性ないしは継続性を持った概念」1)であり,過去の経験は将来のキャリア形成に直結するため,その道のりは正に千差万別で,結果誰一人として同じキャリアとなることはない. 思えば,人生とは選択の連続である.自らの可能性を切り拓いたり断ち切ったりして現在がある.今から数十年前に脳神経外科の扉を叩いたベテランの先生も,重鎮の大学教授も,そして基礎医学研究者であってもそうであったし,今年脳神経外科の専攻を決めた専攻医であっても,また同様である.脳神経外科の領域に進むことを決断した若者の目には,今の脳神経外科の可能性はどう映ることだろう.願わくば,近視眼的な選択をせず広い視野を持ち,脳神経外科学の持つ魅力を堪能するような充実したキャリアを築いてもらいたい. 本特集の目的は,若手の脳神経外科医が自らのキャリアビジョンを構築するうえで脳神経外科の多様性とsubspecialty確立の意義を知っていただくことにある.今回執筆を依頼させていただいた先生方は各分野におけるspecialistである.その専門分野へ進むために必要な資格などの実際的な情報はもちろん,その分野の魅力と将来的な展望までを詳しくご解説いただいた.今この本を手に取る若手の先生にとって,自らの可能性をどのようにデザインしていくかは仕事を通じた人生設計を考えるうえで極めて重要な問題である.この企画

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