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基礎知識 顔面神経側頭枝損傷は,脳神経外科で代表的な基本手技の一つであるpterional approachで起こし得るものであり,本approachにおける注意点を中心に述べる. 顔面神経は,茎乳突孔から出て耳下腺の実質内を貫き,側頭枝(temporal branch),頬骨枝(zygomatic branch)が頬骨弓をまたいで主に前頭筋,眼輪筋を支配する.顔面神経は,外耳道より2 cm前方,頬骨弓基部より1.7 cm下方を走行するため,耳介前方の皮膚切開は,耳珠より1 cm以内から始めるべきであり,下方に皮切を伸ばす際には耳下腺を切り込まないことが重要である.実際の工夫 顔面神経を取り囲むように円弧状の皮膚切開を行う.顔面神経は疎性結合織(loose areolar layer)上層で浅側頭筋膜の層(直下)を走行するが,側頭・頬骨枝が頬骨弓を超える部分は浅側頭筋膜と深側頭筋膜が近接するため,この部分で顔面神経損傷をきたしやすい(図1).そのため,頭頂側から疎性結合織の下層で皮弁を翻転していき,深側頭筋膜浅層下の脂肪層(inter-fascial fat pad)が透見されたら深側頭筋膜浅層20 脳神経外科速報2019年増刊Q003A顔面神経側頭枝損傷の回避法は?顔面神経の走行,側頭筋層解剖を理解するInterfascial dissectionの意味を理解する頬骨弓近傍での無理な皮弁の伸展,圧迫に注意する123図1Cadaverで左側頭部の側頭筋膜,顔面神経の解剖頬骨弓基部耳下腺上端深側頭筋膜深層深側頭筋膜浅層浅側頭筋膜顔面神経側頭枝顔面神経頬骨枝中側頭静脈脂肪層

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