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基礎知識と実際の工夫 術野を広く確保するために,脳べらが脳表から離れた状態で使用するのではなく,開頭辺縁部と接するように装着することが重要である(図1).脳べらの挿入位置として,術者の両手が入る部位以外から挿入するとよい.脳べらは,脳表との接触面を広くして,弱い力で脳表を軽く引き上げるように使用する.また,綿片等を用いて脳べらを間接的に脳表に当てて牽引することを原則として,直接牽引することはできる限り避ける.脳べらの圧迫に伴う脳の局所血流低下により脳損傷をきたす可能性があるため,随時,脳べらを緩める(かけなおす)ことが必要である. 手術中に,術者や助手などが脳べらに触れて,脳が損傷をすることは絶対に避けなければならない.そのため,手術に集中すると忘れがちになるが,顕微鏡操作を代わるとき,ベッドを動かすときなどには,常に脳べらのみならず蛇腹にも注意を払うべきである.脳べらは,あくまで剥離した脳を保持する道具であり,脳べらそのもので剥離する操作は決してするべきではない.できる限り蛇腹の可動性を上げてから,脳表を弱い力で脳を保持するように心がけることも必要である.(長坂 昌平/山本 淳考 産業医科大学医学部脳神経外科)脳べらを使わない開頭手術 手術中に,脳べらが必要な作業かどうか常に考えることが重要である.くも膜を十分に切開していれば,脳べらがなくとも,脳の自重で勝手に術野が展開されていることが多い. IPST22 脳神経外科速報2019年増刊Q004A正しい脳べらの使い方は?深部術野の確保,くも膜の緊張および周囲から剥離した脳を保持するために使用する脳べらを直接脳に当てずに,綿片等で脳を保護する脳べらの位置を変えるときには,脳べらを脳表から離して蛇腹を緩める123図1脳べらの使用

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