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く,剥離が非常に困難である. 術前の血管撮影で内頚動脈が腫瘍の圧排によって著明に引き延ばされ狭小化しているような症例では,腫瘍が動脈壁に強く浸潤しているおそれがある.このような腫瘍では無理な剥離は行わず,内頚動脈の周囲に1 cm前後の厚みの腫瘍を残すことも許容範囲であると考える(図2). (大宅 宗一 埼玉医科大学総合医療センター脳神経外科) 脳神経外科速報2019年増刊 159脳腫瘍 ①良性脳腫瘍・頭蓋底腫瘍の手術章7剥離操作 内頚動脈との癒着が疑われる腫瘍で剥離を試みる場合は,出血を完全に制御した最良の視認性のある術野を確保したうえで,動脈を覆う腫瘍を慎重に動かしたり,あるいは腫瘍と動脈の接する面を鈍的な剥離子で擦ったりしつつ,顕微鏡の強拡大下にわずかなスペースを見つけだし,そこから鋭的に袋とじ方式で切り上げる. IPST図1シェーマa:右前床突起髄膜腫の模式図.腫瘍の発生母地である前床突起の方向(白矢印)に腫瘍を引き出すように操作する.内頚動脈の内側にあるコンパートメント(*)も基本的にはICの外側へと引きだすようにすると,穿通枝を温存しやすい.b:穿通枝が完全にencaseされている症例の模式図.穿通枝の向こう側にある腫瘍を穿通枝越しに摘出する(赤矢印)操作は,できる限り避けるべきである.視神経A1*TumorM1ICIC穿通枝神経ab図2右後床突起髄膜腫a:術前画像.b:内頚動脈(*)と腫瘍とが強く癒着しており,鈍的に擦ったり,鑷子で腫瘍を動かしたりしてみても,腫瘍と動脈のinterface(矢印)にまったくスペースを作ることができない.c:剥離のリスクが高いと判断し,内頚動脈壁の周囲に薄く腫瘍を残存させた.a**bc

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