130082007
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FEATURENeuroscienceの魅力と将来 脳神経領域の人材育成・臨床教育脳神経外科速報 vol.30 no.7 2020.7. 691子羊であり,生徒会の目安箱にも「K先生と付き合いたい」という要望が連日投書された.私が英語をさらに好きになったのも今となってはやむを得ないことであった.また別の英語教師のKT先生にも心から感謝している.高3のときに英語を大量に読む力をつけたいと相談したところ,先生が出張なさったときに『Science』を買ってきてくださった.私は必死でその難解な1冊の雑誌と図書館で連日格闘した. 大学生になり,医学部5年のときにハーバード大学医学部との2週間の交換留学体験があった.この留学の1年前からバイト代をつぎ込んで英会話学校へ毎日のように通った.自分は神経学に興味があったため,Massachusetts General Hospitalの神経内科をローテートした.その際にCharcot-Marie-Tooth病の患者さんの外来診療をさせていただいた.無我夢中で診察し,シニアレジデントに報告した.最後に患者さんが,”You’re gonna be a good doctor”と言ってくれたことがとてもうれしかった. 自分の場合は,こうした一連のポジティブな体験が基礎となって英語を継続的に学ぶことにつながった.脳神経外科医となれば誰しもが仕事に忙殺されるわけだが,英語学習を続けられるかどうかはこのrewardingな体験を感じられる感受性を持ち続けられるかにかかっているのではないか.例えば国際学会でdiscussionできたときの感動を素直にうれしいと感じる新鮮な気持ちを持ち続けることができれば,大きなモチベーションとなると感じている.Ⅲ.英語学習に関する試行錯誤 現在の私にとっての英語は,脳神経分野の英語という側面がほぼ全てになった.したがって社交的な英会話能力の上達などは目的ではなくなり,英語はdiscussionと情報収集(学会や共同研究など),そして自分の持つ情報発信(論文)のためのツールとなった.ここまで,自分の英語学習スタイルの確立には本当に苦労した.過去にはドリッピーの家出にも付き合ったし(分かる方には分かるだろう),単語帳に1万文章以上も書き出して常に携帯して覚えたし,ビジネス英会話もやったし,NOVAもスカイプ英語もやったという私がたどりついた自分なりの結論をご紹介する.A.語彙力 語彙力はきわめて重要である.話の内容が興味深ければ人々は耳を傾けてくれるわけで,どう話すかより何を話すかが重要であるとは言われるが,語句を思い出しながらしゃべっているようでは研究や臨床の現場では誰も待ってくれず話が進んでしまう.瞬間的に口に出せる実践的な語彙力を身につける必要がある.脳神経領域で言えば,症例報告でもいいので常に何か論文を書くようにし,書きながらその文章を思い出して壁にでもしゃべることで使える語彙力を高めることができる.論文内で良いと思った表現は単語帳に書き出す.Discussionに使用する言い回しは実はほぼ決まっており,論文を書く作業がそのまま学会発表で使える英語の学習となる.また外国人とのemailは日常の中で英語に触れられる貴重な機会であると捉え,役立つ表現や単語に出会ったらこれも単語帳に書き出し,別の方とのemailで使ってみると頭に残る.大学院時代はこうして作った単語帳で,脊髄反射でしゃべることができるまで繰り返し練習した.一周回って結局は語彙力である,というのが私の考えである.

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