でさえも確認できないような穿通枝を見ることができる(図1 a). 側頭葉は,脳表を観察すると,上側頭溝,下側頭溝に挟まれるように上側頭回,中側頭回,下側頭回がある.側頭葉底面では,外側から後頭側頭溝,側副溝(図1 b点線),海馬溝に挟まれるように外側後頭側頭回(または紡錘状回),内側後頭側頭回,そして海馬傍回(図1 b②)がある.側頭葉は側頭幹(図1 b実線)を介して島,そして鉤(図1 b①)から扁桃体(図1 b③)を介して淡蒼球(図1 b④)へと連続する.逆に言えば,こうした解剖学的連続性をたどって神経膠腫は浸潤・拡大することになる. 側頭葉における腫瘍局在にはいくつかの分類がある.Faustらは,手術アプローチに基づいて側頭葉外側に局在する腫瘍をtype Ⅰ A(anterior temporo—lateral),I B(posterior temporo—lateral),Ⅱ(temporo—polar),側頭葉内側をtype Ⅳ A(anterior temporo—mesial)とⅣ B(posterior temporo—mesial),そしてその間の領域をtype Ⅲ(temporo—intrinsic)と分類した3).冠状断で脳幹部の幅が最も広いところを境界線として,腫瘍がその境界線の前方に存在する場合にA,後方の場合にBとしている.Ⅰ~Ⅳ Aまでは前方もしくは側方からの経シルビウス裂や経皮質的アプローチであるが,Ⅳ Bのみ後方からの後頭部経テントアプローチが有用と述べている. Schrammらは,手術アプローチに基づいて側頭葉内側腫瘍のみを対象として,type A(側副溝の内側),B(側副溝外側で下側頭回には達しない),C(A+B),D(側頭幹を介して基底核方向への進展),と分類している4).Faustらと同様に,前方をanterior(a),後方をposterior(p)としている.例えば,図2の左側頭葉膠芽腫はFaustらのtype Ⅳ A+B,Schrammらの分類ではtype D a+p,図3の右側頭葉膠芽腫はFaustらのtype Ⅰ A+B,外側型なのでSch-側頭葉腫瘍局在分類275脳神経外科速報2020年増刊V章手 術膠芽腫(GBM)の手術―我々の流儀1:側頭葉内側膠芽腫を中心に1a⑤⑥⑦⑧⑨①②③④⑨⑩⑪⑧⑦⑥⑤②④②③①b図1 a:右側頭葉膠芽腫摘出後の術中顕微鏡写真(図6の症例:腫瘍摘出後術中写真).①前脈絡叢動脈とその穿通枝,②内頚動脈,③後交通動脈とその穿通枝,④動眼神経,⑤後大脳動脈,⑥中脳,⑦上小脳動脈,⑧脳底動脈,⑨小脳テントb:正常脳T2強調画像冠状断.実線は側頭幹,点線は側副溝を示す.①鉤,②海馬傍回,③扁桃体,④淡蒼球,⑤被殻,⑥外包(白質線維),⑦前障,⑧最外包(白質線維),⑨海馬,⑩脳底静脈,⑪視索
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