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COVID−19と脳神経外科医療FFeature脳神経外科速報 vol.31 no.2 2021.3. 207センター)の機能低下は埼玉県全体の重症外傷医療,ひいては救急医療の破綻につながるとの危機意識からCOVID-19診療と高度救命救急センター機能の完全な維持の両立に取り組んできました. 埼玉医科大学総合医療センターの病棟は,東病棟(1〜10階),西病棟(1〜10階),中央病棟(4〜5階),高度救命救急センター病棟,総合母子周産期センター病棟の5つの病棟からなります.このうち他の病棟・部門から隔離された中央病棟4・5階に陰圧ゾーニング工事を行い各10床,合計20床を2020年4月よりCOVID-19(確定)患者専用病床として運用開始しました.重症COVID-19患者病床としては,当初は中央病棟5階に2床,高度救命救急センター病棟内一般ICU(GICU)に2床,小児ICU(PICU)に2床,周産期センター母胎(MF)-ICUに2床を設置しました.重症患者が増加した12月には中央病棟4階に新たにCOVID-19患者専用ICU4床を開設しました. また医師の配置面では,COVID-19患者においては総合診療内科および感染症科の医師が主治医となり,高度救命救急センター専従医師のうち教授2名,准教授1名のみが当番制にて人工呼吸を含めた重症COVID-19患者管理のサポートを行いました.12月のCOVID-19患者専用ICU開設以降は,この重症管理サポートチームに,救急科(ER)教授1名,麻酔科(集中治療部門)教授1名,助教1名が加わり6名体制となりました. このような体制にて2021年1月8日までに累計約150人のCOVID-19患者(うち人工呼吸患者7人,透析患者5人)を診療しました.当院には膜型人工肺(ECMO)は3台稼働していますが,1台は心臓外科手術のバックアップ用,1,2台が高度救命救急センターにおける重症気管・肺外傷患者ならびに重症肺塞栓患者の手術や集中治療管理においてほぼ常時稼働しています.このような状況から病院の方針としてCOVID-19患者におけるECMO導入は原則として行わないことを決定しています. 以上のように,施設および医師・看護師の人員配置において,重症者も含めCOVID-19診療と高度救命救急センターをはじめとする通常診療とを完全に分離した診療体制を構築し,第3波に伴い重症も含めCOVID-19患者の入院が急増した12月以降も維持しています. 救命救急(三次)入院に限らず,全ての救急患者は「COVID-19疑い」として,初療にかかわる医療従事者は全員手袋,マスク,袖付きガウン,フェイスシールドの完全個人防護具(full PPE)を装着して対応を行っています.初療に携わる医療従事者は大人数になりすぎないよう制限しています.飛行機内でのクラスター発生が問題となっていますが,当院ではドクターヘリのフライトスタッフもfull PPEでの活動を徹底しています.さらに,気管内挿管などのaerosol generating procedure(エアロゾル発生手技)の際には,N95マスクを使用し,完全な筋弛緩のもとに迅速な挿管を行うことを必須としています. 救命救急入院患者のCOVID-19リスク評価は,接触歴と患者背景について全病院共通のリスク評価表(図1)を用いて行っています.リスク評価表Ⅱ.埼玉医科大学総合医療センターにおけるCOVID-19診療体制Ⅲ.救命救急入院時のCOVID-19スクリーニング

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