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INFECTION CONTROL 2018年 春季増刊18くなります。また、入院後に使用された感染症治療薬も確認が大切で、それが効かなかったのであれば抗菌薬が到達しにくい膿瘍のような解剖学的問題があったり、そのスペクトラムから外れる起炎菌かもしれません。感染臓器は詳細な病歴聴取と網羅的な身体診察により推定可能で、患者背景と感染臓器から疫学的に起炎菌は推測でき、各種検体のグラム染色や培養検査、迅速検査キット、抗体検査を用いて同定されます。身体診察では“top to bottom approach”で頭のてっぺんからつま先まで丹念に診察する努力と、感染徴候(focal signs)という感染臓器に特異的な症状や病歴に目を向けることが特に大切で、それにより感染臓器を絞ることが可能です。入院患者の発熱の多くが感染症を原因とするものではありますが、薬剤熱やデバイス関連の合併症も考慮が必要で、モニターなどの医療機器や抑制帯、カテーテルなどのデバイス類が診察の邪魔になったり、たとえ面倒でも、創部の被覆材や弾性ストッキングを取り除いてマメに診察する必要があります。実際のプラクティスでは、一般的な頻度に照らしてすべての発熱患者で、「肺炎・尿路感染・胆道感染」といった3つの主要な感染症を考慮し、「採血・尿検査・胸部X線」の3つの一般検査と、「血液培養・尿培養・痰培養」の3つの培養検査をまず行うことが大切で、これを『3×3の鉄則』として研修医には教えています。その他、医療関連の3Dsとして薬剤(Drug)、偽膜性腸炎(Clostridioides difficile関連)、点滴ルートや尿道カテーテルなど(Device)を確認します。長期臥床による3Dsの静脈血栓症(deep vein thrombosis、DVT)、褥瘡感染(Decubitus)、結晶誘発性関節炎〔ピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate dehydrate deposition、CPPD)結晶沈着症〕も鑑別にあげ、合わせて6Dsとしてまとめます2)(表1)。上記に含まれないものとして、高齢女性であれば子宮頸癌などを基礎とした子宮瘤膿腫が、経鼻胃管の留置中や経口気管内挿管中の患者であれば副鼻腔炎が、初めは熱源不明に見えるかもしれません。一通りの診察や諸検査で感染巣/熱源が不確定の場合、感染症なら結核、深部膿瘍、感染性心高頻度の3疾患医原性の3Ds長期臥床に伴う3Ds肺炎薬剤:Drug深部静脈血栓:DVT尿路感染症偽膜性腸炎:Clostridioides difficile褥瘡感染:Decubitus肝胆道系感染症デバイス:Device偽痛風:CPPD入院中の発熱の原因:高頻度の3疾患と6Ds(3Ds+3Ds)表1(文献2より作成、p40)

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