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INFECTION CONTROL 2018年 春季増刊19臨床推論の基本第2章内膜炎、肛門周囲膿瘍、前立腺炎の可能性を考慮します3)。患者の状態が許せば抗菌薬を中止のうえで血液培養を再提出したり、経胸壁心エコーの再検や経食道心エコーが心内膜炎の診断に重要です。深部膿瘍の検索では造影CTが、またルーチンで診ないような肛門や前立腺の診察は肛門周囲膿瘍や前立腺炎の診断に有用です。非感染性疾患では、血液疾患なら悪性リンパ腫を、固形腫瘍なら腎細胞癌や肝細胞癌を検討します。転移性癌では胃癌・大腸癌・卵巣癌が腫瘍熱を来し得ますが、それ以外では合併症がない限り発熱はまれだとされます。自己免疫疾患であれば成人Still病(adult onset Still’s disease、AOSD)、血管炎、リウマチ性多発筋痛症の可能性も検討します。免疫不全によりfocal signsが不明瞭化する場面にも遭遇しますが、担癌状態やステロイド/免疫抑制薬の使用といった分かりやすい免疫不全の他、高齢、コントロール不良な糖尿病、低栄養状態、妊娠、重症のアトピー性皮膚炎、肝硬変、外傷での脾臓摘出後、脾臓低形成、機能的無脾症も患者背景によっては考慮が必要です。大原則である、①どのような患者の、②どの臓器に、③どの微生物が感染しているか、という「感染症診療の三角形」をつねに考える。基本に忠実に『3×3の鉄則』が大切で、さらに入院患者の6Dsを鑑別にあげながら臨床推論を進める。一通りの診察や検査で分かりづらい感染巣の考慮も必要で、たとえば深部膿瘍、感染性心内膜炎、肛門周囲膿瘍、前立腺炎の可能性も検討する。引用・参考文献 1) 青木眞.“感染症診療の基本原則”.レジデントのための感染症診療マニュアル.第3版.東京,医学書院,2015,1-34. 2) 上田剛士.“発熱”.ジェネラリストのための内科診断リファレンス:エビデンスに基づく究極の診断学をめざして.酒見英太監修.東京,医学書院,2014,38-41. 3) Esposito, AL. et al. Fever of unknown origin in the elderly. J Am Geriatr Soc. 26(11), 1978, 498-505.
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