130092007
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特集 1初心者さんのための基礎ポイント 7-医療施設で問題になる耐性菌とその特徴-藤田医科大学 感染症科 助教  櫻井亜樹はじめに 耐性菌について感染対策を行ううえで重要だが種類も多く、耐性菌ごとの違いが分かりづらいと感じている方も少なくないのではないか。ここでは臨床および感染対策上の重要度が高い6つの耐性菌を取り上げ、各特徴を紹介する (表1)。各論に進む前に、これらの耐性菌に共通していえる2つの点をぜひ押さえてほしい。接触感染による拡散 1点目は、これらの耐性菌はすべて、直接または間接的“接触感染”により院内に伝播・拡散されるという点である。“直接”接触感染とは、感染者に接触することにより直接微生物が伝播することを指し、“間接”接触感染とは、汚染した医療従事者の手指や医療器具を介して感染が拡散することをいう。接触感染の原因となる各耐性菌がどこに生息し菌の供給源(=リザーバー)となりえるかを知ることは、感染対策を行ううえでも重要である。保菌か感染か 2点目は、耐性菌が培養で検出されたことと病原性がある(=感染性疾患の原因となっている)ことは必ずしも同義でないことである。耐性菌を「保菌」として持っているだけの患者も多く、特に本来無菌ではない検体(=喀痰など)から検出された場合には、「実際に感染を起こしているのか」「単なる保菌(定着)なのか」を慎重に判断する必要がある。・耐性菌は主に接触感染により伝播・拡散する。・耐性菌の検出時には、「感染を起こしているのか」「保菌(定着)しているだけなのか」を慎重に判断する。1Point 表1  本稿で取り上げる6つの耐性菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)・基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)・多剤耐性緑膿菌(MDRP)・多剤耐性アシネトバクター(MDRA)・バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)INFECTION CONTROL 2020 vol.29 no.7( )21669

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