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透析ケア 2017年夏季増刊230◆透析患者の多くにみられる便秘 ある文献では、透析患者は腹膜透析患者で28.9%、血液透析患者で63.1%が便秘を合併していると報告されており2)、そのほかの文献でも、透析患者の便秘は30〜70%との報告が多数なされています。このように、透析患者の便秘については多くの文献で語り尽くされていますが、本稿ではそれらの文献を参考に透析患者の便秘について述べるとともに、当院での調査を踏まえ、2017年現在における透析患者の便秘について若干の考察を加え解説します。    ◆便秘の原因1.機能性便秘 ①カリウム制限による食物繊維の摂取不足、②飲水制限に伴う水分摂取量の不足、③食事摂取量の不足、④除水による一時的脱水、⑤リン吸着薬や陽イオン交換樹脂などの便秘を悪化させる薬物の内服、⑥筋肉量低下による腹圧の低下などが挙げられます。2.器質性便秘 ①腫瘍などによる腸管の狭窄・閉塞、②糖尿病による末梢神経障害に伴う腸管蠕動運動障害、③多発性囊胞腎患者における巨大腎、肝囊胞などによる腸管圧迫のほか、④腹膜透析症例では、腹膜の劣化に伴い腸管の癒着が進行し、被囊性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal ◦排便習慣は個々によって異なりますが、透析患者は便秘になりやすいという報告が過去には多数あります。◦透析患者はリンやカリウムを下げる薬を内服することで、便秘になりやすいです。◦血液透析中のトイレ離脱や床上排泄を避けるために透析前日の下剤の内服を控える患者が多く、そのことも便秘の一因となっています。◦血液透析中のトイレ離脱は血圧が維持されていれば可能な場合もあることを説明し、患者に排便に対するストレスを過度に与えないようにしましょう。◦2017年現在の当院の便秘に対するアンケートでは、95%の患者が毎日〜3日に一度は排便があり、85%が排便のことで困っていないと回答しています。透析患者の便秘も時代とともに改善してきているのかもしれません。

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