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透析ケア 2017年夏季増刊2313第 章sclerosis;EPS)を発症し便秘になることがあります。また、⑤透析アミロイドーシスによる腸管蠕動運動の低下、⑥透析の急激な除水や血圧低下による腸管の虚血も便秘の原因となります3)。◆便秘の心理的・環境的要因 血液透析患者は週に3回、1回につき最低4時間は透析装置とつながれています。一度透析を開始すると、血圧低下のリスクから簡単にはトイレに行けないこともあります。また、床上排泄は羞恥心や緊張感を伴うため、透析中の便意をがまんしたり、透析前日の下剤を服用せずに非透析日にのみ排便をするようにしたりする患者が多いです。◆便秘時の対処 透析患者の便秘は生活指導だけでは改善しないことが多いため、まずは便秘になりやすい薬剤(リン吸着薬・陽イオン交換樹脂)の減量・中止や、医師による下剤の処方が治療の中心となります。それに加え、朝食を食べる、食物繊維をとるなどの食事指導や、散歩や体操、器質的疾患がなければ腸の走行に沿ったマッサージを勧めます。また、透析中も血圧が維持されていればトイレに行くことは可能なため、便意をがまんしないよう患者に説明しましょう。◆アンケート調査からみる便秘の頻度 過去の文献で述べられているほど便秘で困っている患者は少ないのではないかとの印象から、当院ではアンケート調査を行いました(図1、2)。対象は当院の血液透析患者110名(糖尿病52例、非糖尿病58例、男性82例、女性28例)で、平均年齢は67.8±13.6歳、平均透析歴は6.0±6.1年でした。アンケートの結果、「排便のことで困っている」と答えた患者は全体の15%で、約40%の患者は下剤を使用しているものの、62%が「ほぼ毎日排便がある」と答えています。排便コントロールが不良になる23排便のことで困っていますか? 困っている方はどんなことで困っていますか? 何日に1回排便がありますか? 下剤は使用していますか? いいえ85%いいえ61%ほぼ毎日62%2~3日33%7日以上2%4~5日3%はい15%はい39%便秘72%下痢14%その他14%n=110n=110n=110n=17図1◆当院血液透析患者に行った排便に関するアンケート調査の結果①
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