130101850
16/18

112 透析ケア 2018年 夏季増刊導入時(とくに最初の1週間)は膜面積の小さいダイアライザで透析効率を落として、緩やかな透析を行います。 軽症の場合、血流量を落とすなどして透析効率を下げて様子をみます。症状が持続する場合は、頻回で短時間の透析スケジュールに変更します。また、透析中に浸透圧差を是正できる薬物(生理食塩液、グリセオール®、ブドウ糖、D-マンニトール、10%塩化ナトリウム注射液などの浸透圧物質)を投与することも有効です。 嘔気や頭痛には制吐薬や頭痛薬を投与して、嘔吐した場合は誤嚥しないように体位を整えます。血圧の変動を伴うこともあるため、定期的に血圧を測定します(通常は30分ごと。状態に応じて頻回に測定する)。症状が改善しない場合や重篤化した場合は、透析を中止します。予防法 血流量を少なくする(100~120mL/min程度)、膜面積の小さいダイアライザを使用する(1.0m2前後)、短時間の頻回透析を行う(1回2~3時間で3日連続など)、高ナトリウム透析を行う(ナトリウム濃度143~145mEq/L)などで予防します。また、透析開始前には、不均衡症候群について患者に十分に説明しましょう。筋痙攣症 状 発作性で、筋肉のこわばりやつっぱり、痛みが生じます。四肢(とくに下肢)および腹壁の筋群に起こることが多く、透析後半から終了間近に出現しやすくなります。健常者でも運動後や睡眠中、また過労などにより起こることがありますが、透析患者の場合は透析中に起こりやすい症状です。原 因 筋痙攣は不随意に起こる骨格筋の有痛性の収縮で、いわゆる「こむらがえり」(下肢がつった状態)です。こむらがえりは、腓腹筋の筋肉が過剰に収縮したまま弛緩しない状態をいいます。運動神経から筋肉に「収縮」する指令が伝わると、筋肉組織の細胞のなかにカルシウムイオン(Ca2+)が入り込み、細胞の外にカリウムイオン(K+)が流出します。この流出入によって電位に差が出ることで、筋線維が興奮して筋肉が収縮します。 透析により血圧や末梢循環血流量が低下して筋肉への酸素供給量が減少したり、電解質のバランスが変化することで、こむらがえりが起こることもあります。 そのほか、時間当たりの除水速度が速すぎる、総除水量が多すぎる、ドライウエイトが低く設定されている(ドライウエイトが適切でない)、透析による代謝性アシドーシスの改善に伴うイオン化カルシウムの減少も要因となります。通常、透析によって血液中にカルシウムが補充されますが、代謝性アシドーシスの改善に伴い、血中イオン化カルシウムの減少が起こります。イオン化カルシウムが減少すると、筋の被刺激性が高まり、すこしの刺激でも反応して収縮します。

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る