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透析患者における血圧管理の重要性 透析患者の死亡原因は、心不全や脳血管障害などの心血管疾患が36.2%1)と多数を占めています。心血管疾患の原因の一つである高血圧は、透析導入時での頻度が80〜90%といわれ、透析患者の生命予後と密接に関連すると考えられています。しかし、透析後の収縮期血圧(systolic blood pressure;SBP)が120〜180mmHgで死亡率が低く、それ以上でもそれ以下でも死亡率は高まりU字状の曲線を描くといわれています2)。血液透析患者の特徴として、体液の増加が高血圧の主因であることと、透析中や透析後起立時などに40〜50mmHgの血圧変動を認めることが挙げられ、これらは予後を左右する危険因子3)です。したがって、透析前後の血圧だけでなく、一般に予後と密接に関連する家庭血圧を測り、週間変動や季節変動なども考慮して患者個々の病態に即した治療を行うことが望まれます。検査の頻度 血液透析患者では、透析前および透析終了時に血圧を測定します。血液透析中は30分から1時間置きに測定します。また、透析後の起立時にも測定します。そのほか、自宅で早朝と就寝前に患者自身で測定し、記録をつけてもらいます。高血圧1.疫学と原因 日本透析医学会による2005年末の統計では、血液透析患者の週はじめの透析前血圧の平均は153.1±24.3/78.5±14.1mmHgであり、全透析患者の74.3%が高血圧でした4)。また、終了時血圧の平均は138.5±24.8/74.0±13.8mmHgであり、血液透析中に平均で最低123.4±23.4/68.5±13.9mmHgまで低下していました4)。透析後のSBPは低くても高くても死亡率が高まることを前述しましたが、わが国でも血液透析後のSBPが120mmHg未満と180mmHg以上で死亡率の上昇がみられ、拡張期血圧(diastolic blood pressure;DBP)も60mmHg未満と100mmHg以上で死亡率の上昇を認めました4)。 透析患者の高血圧は体液量過剰が主因であり、その是正によって60%以上の患者で血圧を正常化できるといわれています5)。2.血圧管理目標 透析患者は動脈硬化などの個人差が大きく、個々に心機能などを評価し、全身の動脈硬化の状態を判断して血圧の目標値を決定すべきです。『血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン』では、あきらかな心機能低下がなく、安定して外来治療を受けている患153透析ケア 2018 冬季増刊21第章血 圧

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